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PLASTIC FISH

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07.ルナティックトーチ(2/6)



「ふむ。血に塗れた服と靴は、ちゃんと家族に知られないように持ち込んで隠したのね。残る匂いもまあ、はじめてにしては上出来」
「私に首輪をかけといて、貴方は今までいったいどこにいたの!?」
「なぁに? 会いたかったの?」
会う度に、会話する度に、真は全てを見透かしたようなことをさらりと言ってのける。
京の中で葛藤が渦巻く――認めるべきか、逆らうべきか。会いたかった、といえばそれは事実だ。わけのわからない事ばかりが起こって、聞きたいことがたくさんあった。
だが、真の『会いたかったの?』という言葉の意味は違う色をしている。言い換えるなら、『私がいなくて、さみしかったの?』と問うているのだ。
「会いたいかは置いておいて……聞きたいことは、たくさんあった」
「あなたは吸血鬼である私に血を分け与えられて、人間でも吸血鬼でもない何かに生まれ変わった」
「え?」
「それだけよ」
「……そんな、こと。一言も言ってなかったじゃない……私の意思は無視なの? もう、戻れないの?」
「言ったわ。生きたいのか、何度も問うたわ」
さらさらと、まるでそれが当たり前のことかのように真は語る。そもそも吸血鬼などと、そんな作り話に出てくる架空の生き物の話をされて信じるものがいるだろうか。
だが、京の心には、そういった呆れと同時に思い当たるふしがあった。
現実だと認めざるを得ない証拠が、自分の体の内を流れていた。
「吸血鬼……」
「心配することはないわ。あなたは半端な位置にいる。そのまま長い年月を用いて私の血を受け入れるも、人間世界に戻るもよし」
「戻れるの?」
言葉を鵜呑みにし、表情を明るくした京。そんな様子を見て、真は冷酷に、そして皮肉げに笑う。
「誓いを解けば、あなたはまた死ぬ直前の状態に戻るわよ。その状態から九死に一生を得るというのなら、どうぞお戻りなさいな」
「……」
「構わないわ。よくできたからご褒美を持ってわざわざここまで来たのに、あなたはそれをいらないと言うんだもの。死ぬなり生きるなり好きになさい」
「……ああ、もう。何がどうなってるのよ……」
うんざりだとばかりに頭を抱える京を見て、真は心底愉しそうに目を輝かせた。面白いことになった、といわんばかりに。


作品名:PLASTIC FISH 作家名:桜沢 小鈴