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PLASTIC FISH

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06.夜の世界へ(4/4)



朝になれば灰になるであろう男は無視するとして、血だまりの処分には悩まされた。
こんな不味くて汚いものを地を這って飲む気にはなれない。まあ、捨て置いても問題ないだろう。
男が灰になれば残るは血のみ。どんな精密な検査をしようと、人間のものとは思えぬ異常な数値を示すだけ。身元などわかろうはずもない。
男が灰にならなければ――吸血鬼というものは太陽光に当たると灰になるというイメージがあったが、そういえば原典は違っていた気がする。
まあ、せいぜい怪事件になりはてるだけか。
「ああ、」
危なかった、と京の歩みが少しはやまった。草むらにコートを投げていたのを忘れていた、忘れずに持ち帰らねばいけない。
大事なものだ。
詳細を何も知らないくたびれたコートでも、大事なものだ。
「ナイフは……どうしたものかしら……」
思ったより手に馴染んだので、できればこれも持ち帰りたい。この場に証拠を残すべきではない、ということも踏まえて。
せめて鞘があればいいのだが、そんなものを男がご丁寧に持ち歩いているとは思えない。形状はシースナイフだが、肝心のシースはいくら周辺を探ってもない。
やはり、最初から持ち歩いていなかったのだろう。
仕方がないので、ハンカチを頼りないが刃を隠す覆いとして巻き、鞄に入れて持ち帰ることにする。
鞄は男が勢いで蹴り飛ばしたらしくずいぶん遠い位置に移動していたものの、損傷はない。あったとしても、また買い直せばいい。
刃に巻く前に、ハンカチで口元をぬぐう。乾いて取れなくなった血液は、なめるか爪を使ってはがす形となった。
コートをはおり、あと数時間ほどで夜明けとなろう空の下帰路につく。
月の狂気は薄れ、公園には男の屍のみが残った。


作品名:PLASTIC FISH 作家名:桜沢 小鈴