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ツカノアラシ@万恒河沙
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novelistID. 1469
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Rの晩餐

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ドールハウスを離れ、次の扉を開ける。そこは、黒々とした闇が支配する廊下だった。どこかで、カチコチカチコチ時計の音がする。まるでどこかのお屋敷のような雰囲気に二人は内心でにんまり笑う。この様子だと、噂に違わず素晴らしいものがあるに違いない。廊下の所々には、燭台を模した灯りが光り、二人の行き先を案内するかのようだった。
音を立てないように、二人は廊下を進む。ぬき足、さし足、しのび足。廊下の先のT字路には、柱時計。柱時計は低い金属音で三回音を鳴らす。草木も眠る丑三つ時。ほのかな灯りの下で、酒場で手にいれた地図を確認する。T字路を右を曲がった先の扉が目的の場所らしい。
よくよく考えてみると、だいたい酒場で意気投合したくらいで、お互い見知らぬ同士で簡単においしい話を教えてもらえるのかとか、何故女は都合よく、ここまでの地図を所有していたのか等、つっこみどころ満載な話だが、どうやら両人とも自己中心的でポジティブなおめでたい頭をしているらしい。ああ、素晴らしき事哉。ご都合主義。T字路を曲がると目的の扉。ノブを回すと、こちらもあっさりと回る。折角、力いっぱい回したのに、空回り。
ゆっくりと扉を開けると、室内からポンポンポンと言う音と色とりどりのテープが飛び回った。目に入るのは、前もって準備していたらしい『いらしませ、泥棒さん』と書かれた横断幕と、書斎の奥の重厚な机の後ろには、にこにこしている人物が座っていた。絽の黒い男物の和服に、黒い髪、杏型の碧の目をした美少女のような顔を持つ華奢で小柄な人物。その隣には、澄ました顔をしてかしこまった白い背広を着た若い男が立っていた。因みに、二人の手には、用意の良い事に先ほどの音の主のクラッカーが鎮座していりする。どうやら、佐藤と塩野が部屋に入ってきたタイミングで鳴らしたらしい。佐藤と塩野は、この熱烈歓迎の光景に驚いたままその場に固まったのはいうまでもない。
「ようこそ、いらっしゃいました」