異人館
ただし、お気をつけあそばせ、孵化した少女に貴方が喰われませんように。おもしろいように、良く喰われるんですよ。そう云って、美青年はチシャ猫のような笑みを浮かべると煙管の白い煙を宙に吐き出した。美青年の背中には『廃棄品』と書かれた白い頭蓋骨の山。
『プライムショー稀書店』(稀書商い)
セピア色のお店。族を半ば被ったようなショーウインドウの硝子には『プライムショー稀書店』と仰々しく書かれ、雑貨品が雑然と並べてある。どうやら、この店は本だけではなく、雑貨品も売るらしい。しかし、ショーウインドウの商品に焦点を合わせようとすると、商品は逃げてしまうので実際には何が飾られているのかは不明である。店内に入ると、すぐに湿ったような昔の匂いがする。店主は気難しい金縁眼鏡をかけた中年の女性と奇妙な老人。中年の女性はひっつめ頭に、ショールを肩にかけた灰色のドレス姿。まるでミンチン先生を思い出させるかのような渋い顔をしている。客が現れるたびに無言で眉を聾めるはいつものこと。老人はぎょろっとした大きな瞳に、キョンシーのような恰好をして甲高い声で人懐こく話す。奇妙な店主達。このお店は、稀書店を名乗るだけあって、店内には見たことも聞いたこともない本が整然と並んでいる。時折、時計を持った忙しいそうな兎が現れるのでご注意を。
『怪奇誘拐王とゆかいな仲間たちの研究室』(犯罪実践研究所)
さて、お客様。この絵に描いたような研究室こそ誘拐王、実験王、解体王、埋葬王の四つ子が日々いかにして巧妙な犯罪を実行できるか研究をしている場でございます。
お約束の予告状を美しき深窓の令嬢に出した上で正々堂々誘拐し、美しき深窓の令嬢をキラキラ光る尾びれを持つ人魚に改造する実験をし、人魚と成ったの深窓の令嬢に厭きたら、月蝕劇場にて美女解体ショーを行い、どこかの山奥に七人の小人のコスプレをして埋葬に行く。これが、彼らの基本的な生活です。ご興味のある方は是非、このノートに予約を入れてくださいませ。先日知り合いの『少年探偵』からとある娼館の美少女の誘拐の依頼がありましたものの、未だ予約の余裕がございます。ただし、誘拐しがいのある美しき深窓の令嬢がいらっしゃるお宅に限ります。
『月蝕劇場』(劇場)
作品名:異人館 作家名:ツカノアラシ@万恒河沙