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その扉を開けたら

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ここで皆川氏からざっと説明があった。
この部屋は全部で4LDK。ひとつの部屋は大体6〜7畳程度といったところ。
家具は最低限のものが備えつけてあるけど、自分で持ってきてもかまわないらしい。
部屋自体はそれぞれ個室という形で鍵がかかっていて、自分の部屋以外は無断で立ち入ることは禁止。共同スペースは、居間・キッチン・お風呂場・洗面所・2つあるトイレ。
倉庫として、半地下状態になっているウォークインクローゼットがあるけど、それは共同スペースを掃除するための道具しか入ってないので、自分のものという表記をすればそこに自由に物を置くのはかまわない。ただし量は考えること。
先生たちの生活に関しては、執筆作業も発生しているので一切関知しないこと。
作業の時間配分などは、ワタシ自身に任せてもらえるけど、朝8時、夜19時の食事は必ず用意すること。
日をまたぐような外出や旅行などは必ず皆川氏に連絡すること、など色々と説明を受けながら部屋を歩く。
住み込みのお手伝いさんではあるけど、あくまでもルームシェアをする仲間ということで洗濯に関してはしなくて良いということだったので、野郎の下着を洗う心配はしなくてよさそうだった。
ちなみに給料は……今まで貰っていた金額の半分。
でも、それを差し引いてもこんな豪華なお部屋に住めるんだからまぁいいのかもしれない。
普通に働いていたらきっとワタシには一生無理だ。

仕方ない、ハラをくくるか。
「わかりました。今後ともよろしくお願いいたします」
こうしてワタシの新しい仕事が決まった。

     ****

自分の部屋になる場所で、ワタシは何をどういう風に置こうか考えていた。
絵里と皆川氏は契約のちょっとした確認があるとかで居間に戻っていたけど、おそらくは皆川氏が一生懸命飲みにでも誘っているんじゃないだろうか。
先生ズは、いつの間にか消えていた。
しっかし、新しい仕事が決まったはいいけど……ホントにやっていけるんだろうか。
やってもいないうちから決め付けるのはよくないけど、ワタシ料理そんなに出来るほうじゃないし、試用期間みたいなのがあって、3ヶ月で出て行けとか言われないだろうか。
そんなことばかり考えてたけど、今考えてもしょうがない。

絵里たちまだ終わんないのかな。

かれこれ出て行ってから10分以上になる。
そうだ、帰る前にトイレ借りていこうかなと思って、部屋を出た。
たしかこの通路の突きあたりがトイレだったはず……。

「しっかし、アレ……ほんとに家くんのか?」

突然廊下沿いの扉の向こうでそんな声がした。
ん?

「来るんじゃないかな。皆川さん、あの女社長お気に入りだしな」
「あぁ……なんであんなのがいいのか俺にはわからないけどね」
「まぁそう言うな。家政婦さんが24時間常駐してると思えばいいさ」
「千寿さん、アレが家政婦できるような女に見えた?」
「人はみかけによらないものだよ」

な、なに?
今の会話、もしかして……あの先生ズ???

「そういやミケは今日取材で帰ってこないんだっけ」
「ああ、ミケは明日帰ってくるとか」
「かわいそー。アイツ意見言うこともできなかったね」
「仕方ないさ、まぁあの人も来ちゃったら納得するしかないだろう」
それに、と年上先生が続ける。
「ご飯さえ作ってくれれば俺達が何する必要もなくなるわけだから、彼女には頑張って仕事してもらえばいいのさ」
「そうだね。ま、誰でもいいんだけどさ。俺達の仕事の邪魔さえしなければ。だから反対しなかったんだけど!」

こ、こいつら……。
ワタシは足音を立てないようにそっとその場を離れた。

作品名:その扉を開けたら 作家名:ろし子