その扉を開けたら
いやいやいや、そういうわけじゃないんだけど。
「住み込みだから家賃もかからないし、自分の部屋も貰えるわよ。それに住み込みって言っても、正確にはそういうわけじゃないのよね」
「どういうわけなのよ」
住み込みでお手伝いさんなんて、自分ができるとは思えない。
「住み込みっていうよりもルームシェアって感じなのよ。はじめには、ある人たちとルームシェアリングしてほしいの」
「ルーム、シェアリング?」
「そうよ。で、ここからがちょっと違うのは、共同スペースの清掃と食事だけアンタが用意して欲しいの。これで家賃と食費はタダの上に給料まで出るわよ。まぁ今までの給料と比べるとちょっと少ないかもしれないけどね」
正直言って家賃に食費、光熱費なんかがタダになるのはありがたい。
「まぁ引越し代金はアンタが出すことになると思うけど、友達のよしみで半額までならうちの会社で出してあげてもいいわよ」
すごく……いい条件だわ。
「それっていつまでに返事すればいいの?」
「いつまで?何言ってるの、今から面接行くんだから決まったらすぐ引越しよ」
はい?
「まぁそうね。引越しの準備くらいはあるだろうから、一週間くらいは待ってあげてもいいけど?」
一週間……か。
「なんにせよ、これからアンタと一緒に面接に行って、合格してもらわなきゃダメだけどね」
あぁ、それがあったのか。
「それじゃ行きましょうか」
絵里が立ち上がる。
「うん」
ダメモトで行くしかない。
でもワタシは、この時まだあんなことになるとは想像もしていなかった……。