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さかきち@万恒河沙
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novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】one of A pair

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ACT,3





 皇柚真人は、とある屋敷の前に立っていた。
 ――妹……だったわけか。
 唇を引き結ぶ。
 ――奇遇、と――いうべきだろうな。
 柚真人は、心の中で独り呟き――そして格子の引き戸に、手を掛けた。

      ☆

「すみませんが、少しだけ、妹さんの方の部屋を見せていただけますか」
 少年神主は、そう切り出した。
 そもそもの話は半月ほど前に溯る。
 都区内の高級住宅街にあるこの家で、その事件が起こったのは十一月始めのことだった。
 この家には、家族六人が暮らして居た。それが、今柚真人の目の前にいる夫婦と、その夫方の両親、そして子供たちだった。その子供のうちの片方が、まず、死んだ。
 上の兄だ。これが十一月二日。
 ところが、兄の告別式の日に、下の妹も、死んだ。
 兄の死は、事故。
 妹は、自殺だった。これが十一月五日――話はそこから始まる。
 時間が経って後から考えてみれば、じつにくだらない思い込みだったと、きっと誰もがいうのであろう。
 はじめは、物音。
 誰もいない夜の廊下に響く足音。
 それは気のせいかもしれない。
 住人を失ったはずの部屋で聞こえる、物音。
 それも、気のせいだったかもしれない。何処かに、誰かが潜んでいるような気配。
 ふとした瞬間背中に感じる視線。深夜、目を覚ましたときに、聞こえた気がした、水音。軋み。家鳴り。
 何も彼もが、二人の子供をなくして急に静かになった家の中で、ただ誇張されて感じただけなのかもしれない。古い紙魚が、何故か意味ある形に見えるように。
 禍々しく。
 虚々しく。
 ひどく哀しく。
 けれども、遺された寂しい家族を、恐慌に陥らせるには十分なものだった。
 それでなくとも立続けの不幸だ。
 子供達は、死にきれていないのではないか。
 そのように思った遺族はまず、葬儀を執り行なった寺の僧侶に相談した。そして、気休めの守りの呪いを貰った。しかし、そのとたんに、家の者が恐れていた不可解な現象は、なんとぴたりとおさまったのだと云う。
 だが遺族は一度は安堵したものの、よく考えれば何の解決にもなっていないことに気がついたのだ。これで、子供達がいったい成仏できたというのであろうか――?
 そのような経緯で、皇神社の神主に話がまわってきたのが、一週間程前のことだ。