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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】one of A pair

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 その人影が身に纏う衣装があまりにはっきりと白かったので、すぐに判った。
 彼が――神主なのだ、と。


「あの……っ」
 神主は、人気の絶えた境内で、茜の空を見上げていたようだったが、湖珠の声に気づいたのか、ふいに――湖珠の方を見た。
 ――え――っ……。
 空の映す、紅の残光のもとにたたずむ神主の、その姿に、湖珠はぞくりとした。それは寒気、悪寒、或いは――快感。
「――はい。何か?」
 微笑みながら、彼は言った。柔らかな声だった。高くも低くもなく、耳に心地好い響き。
 ――ドンナ爺サンナノヨオ。オッサン?
 ――ナンカ、ムチャクチャ綺麗ナンダッテ。
 違う、と思った。
 体躯の感じから男であることは、判る。
 だが、滑らかな曲線を描く輪郭は、幼さの抜け切らない少年のものだ。そして、さらりと額に落ちかかる前髪から、切れ長の瞳が覗いたその瞬間には――空気が凍ったと思った。
 恐ろしく端整な顔だった。
 鋭く深いまなざしが、薄闇の底から湖珠を見る。
 それは一部の狂いもない完璧な――美貌、といっていいだろう。
 背は、さほど高くない。しかし頸や肩の線、肢体の均整に――隙がない。
 その様は、まるで精巧緻密な設計を基に造られた人形のようだ。
 湖珠は、まだ十九年しか生きていないが、それでもこの世の中にこれほどの完璧な容貌を有する人間など存在しないと、瞬時に確信できた。絶対を断言できる――ような気がする。
 故に息を呑まされた。綺麗というより気味が悪いといったほうが、まだ早い――。
「神主、……さん……?」
 間の抜けた問いだった。明らかに年下とわかる少年に向かって。神主であれば、一神社を預かる身であろうから、これほど若いはずはない。
 だが、意外にも白装束の少年は、こくりと頷いた。
「はい。そうです」
 湖珠は、言葉に詰まった。続ける言葉が出てこなかった。
 一瞬のうちに頭が真っ白になってしまっていたので、何と言えば良いのかわからなくなっていたのだ。用意していた言葉も、何処かに行ってしまったことに、気づく。
「おれで、貴方の援けになれますか?」
 美貌の少年神主は、湖珠に歩み寄り、そんなことを言った。
 まるで、わかっているように――否、それは湖珠の気のせいだったかもしれない。けれど、少年神主がその刹那、美しいかんばせに浮かべた表情が、そう語ったように感じたのだ。