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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】one of A pair

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「お兄さんの方……。バスルームで亡くなったというお話でしたが……?」
 自分の声も、遠い。
「ええ……」
 揺らめく水面の向こうに、電灯が見えた。泣いてる。
 彼女は泣いている。
「事故でした。酔っ払ったまま……、浴槽の中で眠ってしまったのです……」 違う。
 それは――違う。
「あの子が……。妹まで連れていってしまったんです。仲のよい兄妹でしたから……」
「独りじゃ……寂しいんだろうねえ」 
 ――違う!
 触れ合う肌の感触。
 指先が絡まり合う感覚。
 眩暈がするような――これは、これは一体誰が感じた恍惚感なのだろう。
 腰から崩れ落ちるような、快感――!
 絶望と慟哭の入り混ざった、幸福。高揚感。
 ―――駄目……だ……。
 ぐっ、と柚真人の喉元に吐き気が込み上げた。
 ――駄目だ、ひきずられ……っ。
 柚真人は自分の中に雪崩れ込んでくるその光景を遮断しようとした。
 ――それが、真実なのか!?
 堪らず片方の手で、口許を押さえる。
「どうしました……?」
 きつく目を瞑る。
「あの……?」
 振り払う――禍々しい、その記憶。
 はっ――と、短く呼気を吐く。
「大丈夫です……、すみません」
 思いがけないほど、自分の声が弱々しかった。なんとはなしに、額を拭う。
「ええ……、と」
 姿勢を正して振り向くと、彼等はひどく怪訝そうな面持ちで柚真人を見ていた。
 ――これが結末か?
 茫然と、柚真人は自身に問うた。
 朱の唇からは、嘆息が洩れた。
 柚真人には、確かに霊視えたのだ。それは少女の耳朶を飾る小さな小さな耳飾が。
 ――さようなら。さようなら、コダマ。誰より好きだよ……。
 優しい声を、霊聴いたと思った。
 切ない声を、霊聴いたと――思った。
 
     ☆

 柚真人は篠崎邸を後にした。
 家路、神社へと続く緩やかな坂道を上る。
 それが真実なら、それが彼女の願いなら、もう一度行かなければなるまい。
 寺の僧侶が残した梵字の呪符の結界は、まだ有効だ。葬儀は寺が、お秡いは神社が――そんなことは、さして珍しいことではなかった。柚真人にとって、相手がいかなる宗教を信心していようとそれはさして重要なことではない。大抵の日本人が特定の信仰など持ち合わせていないのだし、仮初の心の平穏を与えてくれるのならば、おそらく神でも悪魔でも構わないのだ。