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自転車系青春小説 -チャリ校生-

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 駐輪場に来てみると、ハヤセが、先ほどの女子高生の肩を抱き、胸を貸していた。彼女は泣いているようだった。一人で帰ってきた俺を見たハヤセは、「役立たず」とでも言いたそうな目で睨んできた。無理ですってば俺には。ハヤセは彼女の方に向き直り、語りかけた。
 「ごめんなさい。たまたま通りかかったらその、放っておけなくて。」
 優しい語り口だ。
 「いえ、ありがとう、ございます…。」
 彼女も泣きながら言った。泣くほどショックなのか。やはり付き合ってたんだな……。
 「その、彼に、伝えたいことが、あったんですけど……。」
 彼女が言った。彼女も彼女で、特別な事を言いたかったらしい。でも、泣いているところを見ると、少なくとも別れ話ではないな。
 ハヤセも、彼女の話に耳を傾けるつもりらしく、じっと彼女を見つめていた。
 俺も、聴く気でいた。乗りかかった船って言うしな。こんなこと目撃しちゃって、放っておけるほど、ハヤセは冷たい奴じゃないさ。俺はそんなハヤセに巻き込まれるんだろうけどよ。
 「私、実は今日で…学校辞めるんです。」
 彼女はそう言った。どうやら別れ話だったらしい。
 「どうしても、理由があって。」
 まあそうだろう。学校辞めるって言うのは、よほど勉強嫌いな奴じゃない限りは、めったに理由なんてない。
 「だから、今日そのことを彼に…あっ!」
 彼女は会話の途中で、俺らとは違うほうを向いて驚いた。そこには一台の車が止まっていたからだ。
 「そんな、もう行かなきゃ、いけないみたい、です。」
 どうやらその車は彼女の母親が運転してきたものらしく、彼女を迎えに来たらしい。車から母親らしき人物がこちらへとやってきた。
 「ミコ、もう行かなきゃ。」
 「えっ、そ、そんな……!」
 彼女はあわてたような、さびしいような、そんな顔を浮かべている。
 「質問がある!」
 と、突然ハヤセが切り出した。本当に何なんだ。
 「あんたの彼氏、何年何組?」
 「え、えっ。3年1組……ですけど。」
 「あんたはこれからどこへ行くの?」
 「駅……です。」
 おいおい、彼女も困ってるじゃねえか。何言い出すんだハヤセは。
 「わかった。あんたは時間がないだろうから駅に行ってていい。でも、あんたがこの街出るまでには、あんたの彼氏、絶対連れてくるから!」
 そう言ってハヤセは、校舎の中へ勢いよく走り出した。
 「お、おいハヤセ!」
 俺もあわてて後を追う。
 「ぜ、ぜったい……!絶対伝えて!私が話したこと!」
 俺たちの背中に向けて、彼女はそう訴えていた。