Father Never Say...
淀みなく放たれた春日の決意に、東海林は苦笑いする。
「なるほど、君は善人さんに似ている」
「それ、先輩にも言われた」
「聖人か」
状況を思いだし、外の物音に気付く。音のする方の窓を開けて下を見下ろすと、聖人の笑顔が目に飛び込んできた。
「理人さん説得したよ〜!」
理人は完全に陥落したわけではなかった。「兄貴の世話になってたら、償いにならねぇだろう!!」と駄々をこねる理人を引きずるようにして「身代金を受け取ったって同じことじゃないですか」と呆れながら屋敷に入った聖人は、ソファにちょこんと座り緊張してカチンコチンの春日を目にするなり、あっさりと言ってのけた。
「ただいま、怜くん」
「は!?」
身構えていた春日は、予想外の言葉に思わず声をあげる。
「な、なんで……」
「だって君、もう春日じゃないでしょ」
春日、改め、白河怜は後に知る。聖人は毎日欠かさず新聞のお悔やみ欄をチェックする人間だということを。
かくて白河家は使用人を除いても八人の大所帯となった。
「あ。俺、家出て結婚するよ」
翌年二月、受験を済ませた聖人の爆弾発言により一騒動起こるのだが、それはまた別の物語。
作品名:Father Never Say... 作家名:9.