打ち上げ花火
「遂にこの日が来たね! ワクワクするう」
友達がウキウキした口調で言った。
私は今、友達数人と地元の花火大会に来ている。地元では一番大きな花火大会らしい。それもあってか、私達が現地についた時は、もう人がごった返して何が何だか分からない状況になっていた。
「友達数人」の中に、みつこはいない。最近は私がみつこを避けるようになり、喋ることも少なくなってしまった。
「こ、混んでるね……」
「当たり前だよそりゃあ」
「でもこれは混みすぎじゃ……違う場所行こうよ」
友達の意見に同意すると、私達は人込みからやっとのことで抜け出し、空いている場所を探した。最終的に行き着いたのは、空いてはいるが、花火大会の会場からかなり遠く離れた場所だった。
「これじゃ見えないよー」
「いや、見えないことは……ないと思うよ?」
「ああんもう、人込みに負けなければ良かったあ」
友達が愚痴っている間に花火大会が始まったようだ。どん、ばぱぱぱ……という音が聞こえる。
「小さっ!」
「遠っ!」
友達が口々に言う。確かに遠くて小さくしか見えない。けれど、次々に打ちあがっていく花火はとても綺麗だった。友達も次第に愚痴らなくなり、花火に見入り始めた。
私は花火を見ながら、ふとみつこのことを思い出した。そういえば、この打ち上げ花火はみつこのようだ、と思う。徐々に限界に近付いて行って、破裂してしまう。高校に入ってからのみつこの心そのものではないか。
私がぼんやりとそんなことを考えていると、不意に友達がぽつりと言った。
「この花火、打ちあがってから音が鳴るまでの時間が長くて、何か不思議だよね。遠いからだろうけど」
うんうん、と皆が同意する。私もそう思った。
花火は破裂し、花開いて、散っていく。しかし、どん、と破裂する音が聞こえるのはもうとっくに花開いている頃だし、ばぱぱぱ……というの音が聞こえるのは、花火が散り始めて暫くした頃だ。
私達は花火大会の間、花火の美しさと、音と光の時差の両方を楽しんだ。