花園学園高等部二学年の乙女達
「朱美」
裕子は咲の頭を撫でながら朱美を見上げた。
朱美はよし、こいつを消滅させようと決意した。
「朱美、肩を貸してくれないかしら?」
裕子の懇願は命令を意味する。
しかし朱美は体が動かない。
彼女は怒りにうち震えていた。
「…いっ嫌だ!」
「朱美」
「…」
朱美は全く納得していない表情で荒々しく咲の肩を掴んだ。
咲はだらんとぶら下がる。
「なんなんだこいつは?あれか?やる気がなくなっちゃったんでちゅかぁ?」
「朱美」
「…僕はこいつを認めていない!」
裕子は黙って朱美を見つめる。
そしてその薄い唇を開いた。
「…地下に連れていきましょう。」
スペイン語だ。
「なっ…なんで?!だってあそこは…」
「このこ、このままじゃこの学園の狼達に喰われるわよ」
「…」
朱美は否定出来なかった。
どんなイケスカナイ奴でもどうなるかわかっていてほかっておけるほど朱美は出来た人間ではなかったのだ。
それに彼女はあることに気付いていた。
…こいつに貸しを作っておくのも悪くない。
「…わかった。裕子に頼まれたら仕方ない。」
朱美は出来るだけ咲の顔をみないようにしてぐっと肩に体をもたらせかけた。
遠巻きに見ていた女子生徒たちの中にはフッと気を失うか、みとれ過ぎて本をボトボト落とす者が続出した。
朱美の頬に咲の熱をもった息がかかる。
「…」
…ホントに嫌になるな。
朱美は、小さく舌を打った。
作品名:花園学園高等部二学年の乙女達 作家名:川口暁