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私のやんごとなき王子様 理事長編

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 あの時お互いに好きだとはっきり伝えた訳ではなかったけど、忙しい合間を縫ってメールや電話をくれる理事長の優しさは本物だ。第一子どもである私をからかった所で、デメリットはあれどメリットなど一つも無い。

 仕事の都合でメールが来ない日もあるけれど、それくらい何て事はない。私は理事長の為なら我慢出来るもの。 

「でもさ、大丈夫なの? 全然会ってないんでしょ?」

 さなぎがふと真剣な顔で言った。
 確かにあれから二人で会った事は一度も無い。というか、会える訳が無い。私は学生で、彼は学園の理事長なんだから。
 だけど私はその言葉に迷う事なく頷く。

「大丈夫だよ。だって、好きだから」
「やだ〜もう! ご馳走さま! 美羽の口からそんな言葉が聞けるなんて、渚お姉さんは嬉しいぞ!」

 パシン! と景気良く私の肩を叩くと、さなぎは立ち上がった。

「幸せを皆で再確認した所で勉強に戻りますか〜」
「うん、そうだね」

 さなぎに吊られて私と米倉君も立ち上がる。
 歩き出したその瞬間、私の携帯が鳴った。

「あ……」
「どったの、美羽?」

 液晶画面に映し出された名前に、私は慌てた。

「ご、ごめん。先に戻ってて!」
「……あー。うん、了解! 行こっか?」

 さなぎは米倉君を促して二人で先にテラスから出て行った。

 ごめんね、さなぎ。