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私のやんごとなき王子様 理事長編

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「僕は卑怯だ。彼女に優しく出来なかった事をずっと後悔していた。もっと優しく接していれば、彼女は僕の事を見てくれたかも知れない、と……だから、彼女に似ている君に優しくする事で、過去から抜け出せないでいる自分を救いたかった」
「理事長―――」
「本当にすまない事をしたね……小日向さんとゆっくりと話しをしたのはほんの数日前だけど、僕は気付いたんだ」

 そこで理事長は私の目の前まで来て足を止めた。
 私は初めて理事長と会った時からのこの数日間を思い返していた。

「君と話していると、昔だけじゃなく、今でも愚かで成長していないということに気付かされた。ずっと進めずにいた過去から、君が僕を救ってくれたんだ……」
「私が? 理事長を……?」

 何もしていない。ただ私は、素敵な理事長のお役に少しでも立ちたかっただけ。
 卑怯なのは私だ。

「小日向さん――――君に、恋をしてもいいだろうか?」
「っ……」

 私は耳を疑った。

 予想もしなかった理事長の言葉に、私はじっとその整った顔を見たまま、何故か溢れてくる涙をぬぐう事も忘れていた。

「僕みたいなおじさんに、こんな事を言われても迷惑かもしれないけど、君といると前に進めそうな気がするんだ」
「迷惑だなんて―――」
「本当に?」
「はい」

 顔を下に向け、ぐっと両目をつぶると理事長のコロンがふわりと香った。