私のやんごとなき王子様 理事長編
「小日向さん、今日はありがとう。僕は明日帰るから、今度会うのは学園に戻ってからだね」
「はい……」
そうだ。理事長は明日の朝には島を離れる。だけど今度会うって言ってくれたのは、また私と会って話してくれるという意味なのだろうか? もしそうだったら勘違いしそうだ。だってこうやって優しく抱きしめられて優しい言葉をかけられたら、誰だって勘違いする。
―――水原さんには? 理事長、彼女にも同じ事をするんですか?
聞きたかったけれど聞けるはずも無く、私は戻ろうかと言って歩き出した理事長の隣りを歩きながら、一度も顔を上げる事が出来なかった。
まだ抱きしめられた時の感触と香りが残っている。
熱に浮かされたような感覚に、自分が完全に恋に落ちてしまった事を知った。
作品名:私のやんごとなき王子様 理事長編 作家名:有馬音文