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私のやんごとなき王子様 理事長編

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「誰でも学園の校風や教育方針に感銘したといったありきたりな文章が多い中、君はこう書いていたんだ。『生徒の自主性を重んじ、生徒の心を育む事を第一とする貴校の教育理念を立てた倉持理事長に是非お会いしたい。そしてそのお人柄を自分自身で確かめたい』と……」
「すっ、すみません! 私ったら中学生のくせに偉そうな事を書いてしまって!」

 そう、私は生意気にもこの学園の理事長を見定めたいなどと言ったのだ。信じられない! 恥ずかしい!

「ふふっ。いいんだよ、謝る事はない。僕は君のその言葉にとても心を打たれた。それで僕はもっと頑張って学園をより良くしなくてはと思ったんだからね。君に会った時に、この理事長で良かったと思ってもらいたかったから」
「ほ、本当ですか?」
「そうだよ。だから、君には感謝しているんだ。学園を守って来れたのも、きみのおかげだよ――ずっと君とゆっくり話しがしたいと思っていたのだけれど、なかなかチャンスがなくてね……今回健亮が僕の迎えに小日向さんを寄越してくれたのは本当に嬉しかった」
「ありがとうございますっ」

 理事長は本当に出来た大人だ。普通なら腹を立ててもおかしくない私の暴挙を許してくれたどころか、感謝しているとまで言ってくれるなんて。子ども相手に簡単に言える事じゃない。

「君とこの数日一緒に過ごして昔好きだった人の事を思い出して、あの頃の情熱がまた僕の心の中で頭を起こして来たみたいだ」
「えっ?」

 すうっと伸びて来た理事長の腕が、私の体を包み込んだ。

「りじ、理事長っ!?」
「ごめん、少しだけこのままで……」
「……」

 ぎゅっとその大きな胸に私は抱きしめられたまま、驚きと緊張でぴくりとも動けなかった。
 どれくらい理事長に抱きしめられていたのか時間の流れが全く分からなかったけれど、理事長の甘いコロンの香りが私の体の中に溶けてしまいそうに幸せだった。

「君は、本当に素敵な女性だ」

 ため息まじりにそう言うと、理事長はゆっくりと私の体を解放した。
 まだドキドキと煩い心臓に、私は恐らく真っ赤であろう顔を伏せたままじっと足元を見ていた。
 だってどんな顔して理事長を見たら良いのか分からないんだもの。