私のやんごとなき王子様 理事長編
「本当に君にはわがままを言ってしまって、すまなかったね」
「え? いいえ、そんなこと……」
「わがままついでにもう一つ、僕のお願いを聞いてくれないかな?」
「なんでしょう?」
私の方へ視線を戻すと、理事長はほんの少し子どもっぽい表情をして小さく首を傾げた。
「これから一緒に海に行ってくれないか」
「海ですか?」
目を丸くする私に、外をもう一度見てから理事長はこちらへやって来た。
自然に私の肩に手を置くと、そのまま促して歩き出す。
「そう、海。僕はここに来てまだ一度も海に行っていないからね。それに君は初めて会った時にまたデートしてくれるかと尋ねたらOKしてくれただろう?」
「あ……はい」
理事長を迎えに行った時の会話を思い出し、私は少し恥ずかしくなって俯いた。
優しい理事長の手は温かくて、ずっとこのまま理事長の傍にいられたらいいのに。と勝手な事を思ってしまった。
作品名:私のやんごとなき王子様 理事長編 作家名:有馬音文