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私のやんごとなき王子様 理事長編

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「小日向」
「はい?」

 一人自分の想いを心の中で反芻していると、真壁先生がいつもより少し真剣な顔でこう言った。

「理事長は凄い人だ――何があったか知らないが、これだけは言える。あの人の言動には意味の無い事はない。お前が思っている以上に学園の事や周りの人間の事を考えているんだ。だから……ちゃんと話しをしてみろ。真剣に向き合え。そうすればきっとあの人の事が分かるはずだ」

 もしかしたら真壁先生は私が理事長の事を嫌な人だと誤解してると思ってるのかな?
 この真壁先生にこんな事を言わせてしまう理事長は、やっぱり素敵な人だ。

「分かりました、ありがとうございます。それじゃあ行ってきます」
「お、おう。それを置いたら部屋に戻っていいからな」
「はい!」

 私は軽やかに部屋を飛び出した。

 理事長の事を好きだと自覚したら、すごく気持ちが軽くなった。
 そうか、好きってこんな感覚なんだな。重たい書類も軽い気がする。
 足も軽いから理事長の部屋へ到着するのも早かった。

「すう……はあ……」

 呼吸を整え、チャイムに指を伸ばした時だった。

「理事長、私の話しを聞いていただけませんか?」

 中から水原さんと思われる声が聞こえて来た。
 ドアを挟んだすぐ向こう側に立っているらしく、くぐもってはいるけどその声ははっきりと聞き取れる。