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私のやんごとなき王子様 理事長編

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 さなぎ効果はてき面だったらしく、午後からはミスする事も無く無事に仕事を終える事が出来た。

「よし、これで終わりっ」

 机の上を片付けて立ち上がると、真壁先生が部屋に入って来た。

「おう、小日向。お疲れ」
「お疲れ様です」

 何だか笑顔も自然に出て来る。

「お前ちょっと理事長の所へ行ってくれないか?」
「え?」

 予期せぬ申し出に、私は思わず真壁先生を凝視してしまった。

「なんだ? 都合悪いか?」

 今朝理事長の手伝いをやってくれないかと頼まれた時、すぐに返事をしなかった私に変わって水原さんが手を挙げた。真壁先生はその事について何も言わなかったけど、理事長と仲が良いみたいだし、もしかしたら何か聞いたんじゃないかと心配になる。

「いえ、そう言う訳では……」

 なんとか取り繕ってそう言ったものの、言葉に説得力が無い。

「―――夜に理事長の所で教師が集まってミーティングをやるんだ。それでこの書類を持って行ってもらいたいだけからさ」
「あ、はい。分かりました」

 受け取った書類の束を抱えると、私は覚悟を決めた。
 避けていても仕方ない。それに、合宿が終われば近くで顔を見る事も話しをする事もなくなるかもしれないのだ。

 そしてどうしてこんなに理事長の事が気になるのか、ようやく気付いた。

 知り合ってほんの短いこの数日間で、私は理事長の事を好きになってしまっていたのだ。
 本当は水原さんが理事長の手伝いをすると言った時、後悔した。理事長の傍で理事長の声を聞いてあの優しい笑顔を見たかった。
 昨日の事は外国の人との付き合いの多い理事長だから、本当に挨拶程度の事なんだと解釈出来たけど、まだまだ子どもである私にとってはまるで王子様に出会ったような衝撃でドキドキした。
 もっと理事長と仲良くなりたい。
 そんな浅はかな思いが強くなって行く。