私のやんごとなき王子様 理事長編
さっきから理事長に驚かされっぱなしで、すっかり忘れてた。
私がそう申し出ると、理事長は静かに首を横に振る。
「自分の荷物なんだ、自分で持つよ。それに、女性に荷物を持たせる訳にはいかないからね」
「でも、理事長を迎えに行くように頼まれたのは私ですし」
「なるほど、仕事をしないと真壁先生に申し訳ないということかな? 真面目な子だね、君は……先生方の手伝いは大変じゃない?」
気さくに話しかけてくれる理事長は、どうしても荷物持ちをさせてくれそうにない。仕方ないのでそのまま歩くことにした。
「いいえ、とてもやりがいがあります。楽しいです」
「小日向さんは真面目で頑張り屋さんなんだね」
「えっ? いえ、普通です……」
こんなふうに理事長と会話をするなんて想像もしなかったけど、すごく話しやすい人だなあ。
作品名:私のやんごとなき王子様 理事長編 作家名:有馬音文