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私のやんごとなき王子様 理事長編

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演劇祭準備期間5日目

 うん、理事長を迎えに行くのも仕事だもんね! 行こう!

「分かりました、私、行きます」
「そうか、悪いな。俺も手が空いたら行くから」
「はい」

 嬉しそうに言う真壁先生に明るく返事をし、私は船着場へと向かった。
 理事長かあ……上手に挨拶出来るかな。またドジ踏まなきゃいいけど。
 ちょっぴり不安を抱えながら、私は大きな入道雲が広がる青空を見上げた。


*****


「おや?」

 私は船着場で目の前に横付けされた立派なクルーザーから現れた男性の姿に緊張した。
 さらりとエルメネジルド・ゼニアのスーツを着こなした素敵なその風貌に、思わず瞬きを忘れて見入ってしまう。
 その男性は私の顔を見ると先の言葉を発し、すぐに微笑んで挨拶をくれた。

「こんにちは。君は確か真壁先生のクラスの……小日向さん、だね? もしかして迎えに来てくれたのかな?」
「あっ、はいっ! 先生に言われて来ました」

 びっくりした。まさか一生徒である私の名前まで知ってるなんて。
 そう、この素敵な男性が我が星越学園の理事長、倉持稀彦(くらもち まれひこ)さん。さなぎも言ってたけど、理事長には全く見えないモデルのような人だ。
 真壁先生と同じ位の高い身長と柔らかな表情、でもその眼孔はキリリと鋭く、出来る人だという印象を一瞬にして与える。

「自分の島なんだからわざわざ迎えに来てくれなくても大丈夫だったんだけどね」

 そう言って私の隣りに並んだ理事長は、さり気なく私の肩に手を置いて歩き出した。

「でも、せっかくこんなに可愛らしい人が来てくれたんだから、忙しい真壁先生とその気づかいに感謝しようかな」
「か、可愛らしいだなんて、そんな……」

 こんな恥ずかしい台詞を言っても許されるのは、きっと理事長だからだ。
 歩き方やしゃべり方、どれ一つをとっても隙のない理事長は前理事長のご子息で、元華族の血を引くだけあって多方面の著名人に顔が広い。おかげでこの演劇祭も盛り上がるのだけど、ここまで大々的に出来るのはこの理事長の手腕だからこそだと思う。
 だけどそれを鼻にかけるような言動をしない理事長は、本当に大物だ。

「あのっ、お荷物お持ちします!」