私のやんごとなき王子様 理事長編
憧れと尊敬と恋心を含んだ視線は、もしかしたら私のそれであるかもしれない。もしそうなら、理事長は気付いているだろうか? 気付かれているのならこれほど馬鹿らしい事は無い。
理事長みたいな大人の男性が私みたいな子どもの相手をしてくれるはずはないけれど、でも水原さんみたいな色っぽい女の子だったら?
――きっと敵わない。
「ああ、もう。ダメダメ、仕事しなきゃ……」
自分に言い聞かせるように呟いて、私は何だか重たい体を引きずって理事長のスイートルームへと戻った。
作品名:私のやんごとなき王子様 理事長編 作家名:有馬音文