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私のやんごとなき王子様 理事長編

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 理事長と一緒にあちこちの部屋を覗く度に、忙しいはずの生徒ほぼ全員の動きが面白いように止まった。

 理事長は学園の生徒達(特に女子)にとっては憧れの人なのだ。まあ、私もきっと生徒指導担当じゃなかったらこの中の一人として理事長登場に目を輝かせていたんだろうけど。
 どっと人が押し寄せることはさすがになかったけど、お疲れの理事長を余計に疲れさせてしまったんじゃないかってずっとハラハラしっぱなしだった。

 一通り見終えると時間も昼近くになって、私達は食堂へと向かう事にした。

「すみません、理事長」

 自然と謝罪の言葉が出て来る。
 そんな私を不思議そうな顔で理事長は見て、困ったように笑った。

「どうして謝るのかな」
「まさかこんなに皆から注目されるなんて思ってなくって……息抜きにこっそり覗くつもりだったのに、結構話し掛けられたりして余計に疲れたんじゃないですか?」

 はあ〜、本気で秘書失格だよ、もう……。

「僕は普段あまり生徒達と触れ合う機会がないからね、すごく楽しかったよ」
「本当ですか?」

 気遣ってくれる理事長に感謝しなきゃ。本当にこの人はよく出来た人なんだな。目の前の食事も皆と同じもので、特別メニューではない。こういった所も理事長が色んな界隈から注目される要因の一つなのかもしれない。

「君は、僕の知っている人に良く似ているね」
「え?」

 長い指で握るコーヒーカップが急に高級そうに見えるな、なんて思っていたら、何気なくそう言われた。