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高校生殺人事件 警視庁・香川美優と雪菜の事件簿(一)

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「そろそろ公園に、姿を現してくるかもしれない。現場に張り込んだ方が早いな」
 と、沢木が言った。
「本当に殺人事件、ほっぽっていいのかな?」
 まだ気にかけている。部下は常識的だった。
「急がば回れってこともあるさ」
 と、沢木が言った。

「あれ、ネコいなくなってるじゃん。何で?」
「殺したんじゃなかったの?」
「バアさんが捨てたんだよ」
 高校生に見える若者四人が、ポケットに手を突っ込み、制服をだらしなく着て、公園にやってきた。IPODを聴いている少年は、一人だけよそを向いて、ペットボトルのお茶を口に含むだけで、仲間の会話にすら全く興味がない。
「あいつらか。まだカワイイ坊やじゃないか」
 と、沢木が言った。勢いでやってしまうだけで、犯罪という意識が薄そうである。
「ねぇ。君たちかい。ここ数日、この公園で大騒ぎしているのは」
 威圧的な態度で相手を堅くしては、喋らせることができなくなり、逆効果だ。親しみをこめた口調で沢木が優しく質問する。
「何だよ、あんた」
 帽子をかぶったのがいきなりトンガる。
「大騒ぎって何?ただ喋ってるだけだし」
 軽犯罪をしている少年が、まず反抗的な態度をとるのにはもう慣れている。てばやく、四人から名前と学校名を聞きだすと、幼く見えるだけあって全員が高校生だった。ネコ殺しをやっていないかを切り出し、反応があるので、厳しく問い詰めると、沢木らを怖がり出した。

「やったのは遊児だよ。なぁ」
 これはあとでウソと分かった。しかしこの言葉で、殺された遊児と関係のある高校生だとわかった。
「どこの学校だ?」
 と、沢木が聞いた。
「都内の一宮高校さ。新聞見てないの?載ってたよ」
 沢木と藤川は顔を見合わせた。家の者が不良と面識があるのを知られたくなかったのだ。家族が隠していた容疑者が向こうからやって来た。
「帰っていいよ、カモネギさんたち」
 と、沢木は言った。
「えっ」
 と、三人は口をそろえて言った。
 沢木と藤川は高校生たちを帰した。

 翌日、目覚めると九時になっていた。雪菜はびっくりして起きたが、眠気が吹き飛んだ。平日である。自分は中学生ではないか。
「学校。学校だ」
 朝なので夜消し忘れた電気を消して部屋を出た。朝の支度を済ませてしまうと、今度は登校するのが面倒くさくなり、美優の家で時間を無駄にするため、カバンを抱えて、早目に家を出た。マンションの五階へ急ぎ、リビングにお邪魔した。何故か、美優がいる。気まずくなり、何から聞こうかと躊躇していると、
「今日は特別に休んでいいわ。明日からは行くのよ。そんなに甘えは許さないわよ」
 と、じろっとにらむ。
「美優さんは何で…」
「私は午後からなの」
 スマして言うが、本当は無理に休んだ。その上、雪菜が来ることまで予測している。
「それでね、せっちゃん。例のネコ殺しの犯人の情報を掴んだわ。犯人は少年グループだったの。名前は夏木涼平、近松為久、柳達郎、黒沢浩一の四人よ。こいつら動物虐待だけじゃなく、万引きの常習者かもしれないの。余罪を追及してるわ」
「もうそんなに」
「警察はあまくないのよ」
 美優はぬけぬけと言った。雪菜のために部下を数人こき使っていた。雪菜には甘いが、部下には冷たいのだ。


 警視庁捜査一課の会議室。
「報告します」
 と、沢木刑事が言った。
「五月十一日の十九時から二十時の近松為久、柳達郎、黒沢浩一、夏木涼平のアリバイの供述です。犯行時間は渋谷のパチンコ店で四人とも打っていたとのことです。近松は十九時二十分頃、喫煙コーナーでタバコを吸っていたら黒沢が入ってきた。十九時三十分頃、席を探していたら、夏木がトイレの方に行くのが見えたといっています。次に柳ですが、よく出る台だったので、ずっと同じ席で打っていた。ナナメに左、二つおいた席に夏木が座っていたと言っています。黒沢は十九時二十分前に、席を立ってタバコを吸いに行った。そのとき夏木と柳が打っているのが見えた。喫煙コーナーに入ったら、既に近松がいて二、三言葉を交わした。彼は、十九時三十分頃に出て行って、自分は十九時四十分頃打ちに戻った。そのときも夏木と柳を見たそうです。夏木は十九時前からナナメに左、二つおいた席に柳がいた。途中十九時三十分頃、トイレに立った。一旦元の席に戻ったのだけど、やっぱりやめて十九時五十分近くに席を変えたという供述です。四人が店に来たのは、十八時三十分前で、従業員が記憶していました。高校生に見えたので、よく覚えているそうです。四人組はそろって、二十時三十分過ぎに店を出たと言っています。さらに、現場からパチンコ店までの片道は十五分かかります。証言によれば、三十分間見なかったことはなかった。つまり、証言を信用するならば、アリバイは成立すると考えられます。以上」
 美優は、
「よくできている」
 と、言った。

 第五章 探偵ごっこ

 美優は部下からの情報を整理しているのか、思案している顔だ。その姿に目をやりながら、雪菜はニンテンドーDS light で遊んでいた。教授と子供が出てくるヤツである。
「ネコ殺しの犯人グループと、殺された高校生は繋がっていたのね?」
 と、美優はメールチェックに、つい声を出した。
「え?」
 もう遅かった。こういうことには、雪菜は好奇心宿る目を向けるのだ。ごまかしても良かったのだが、事件に対しての話し相手に雪菜を選んだ。
「家族が息子の遊児の素行について隠していたから、分かっていなかったのだけど、少年グループのへまで、バレたみたいね。どうやら遊児が嫌気がさして、仲間を抜けるか、万引きしていたことを警察に話すと、仲間に詰め寄っていたらしくて、関係に亀裂が入ってみたいね」
「それじゃあ、少年を殺したのは…」
 と、雪菜は恐る恐る聞いた。
「彼らにはアリバイがあるわ。供述通りだとすると、完璧ね。それに、万引きがばれるくらいでは人は殺さないわ」
 と、美優は言った。
「仲間同士で証明しあってるとかですか?」
「まぁ、そうなのよ。彼らは被害者が殺された時間、同じ店に四人でパチンコに行っていたというの。離れて座っていたらしいのだけど席を立ったり、割と近くに座ったりで全員がお互いを証明してるわ。作為が感じられるわね」
「パチンコ店なんて人がいっぱいいるし、騒々しいのにホントに分かったんですか?」
「それなのよね。もう一度考えてみましょう」
 と、言って、美優がコーヒーをいれだした。
「僕がやりますよ」
 雪菜は、美優のためにコーヒーをいれるのを代わった。
「ねぇ。だからさぁ。何で、せっちゃんが、いれるとおいしいの?」
 美優が、真顔で聞いたので、雪菜は笑いをこらえた。粉を少なくして薄く作っているだけだと、早く教えてやったほうがいいのか。前々から聞いてくるが、まだ知らないでいる。大人なのにと笑ってしまう。
「それで、高校生の方の事件は、一昨日の何時ごろに起きたのですか?」
「そうね」
 探偵ごっこをし始めた雪菜を、気にしなくなっている美優。大らかなのだと自分に都合の良い解釈をしているようだ。