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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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「なんだ?」

 ぶしつけに睨んでいた私に気付いた鬼頭さんが振り向く。

「いえ、たいした事じゃないんですけど、私達の関係って一体なんでしょうか?」
「……あ?」

 うわ、怖い。本気で怒ってる……

 私の質問に目を細めた様子に一瞬しまったと思ったけど、でもここで引いたら駄目だ。

「だって、こうしてたまに一緒に出かけたりしますけど、鬼頭さんの口から私の事をどう思っているのか聞いたことがないから……」

 そうよ、一度でもいいから聞きたい。それが乙女心ってものでしょ?
 鬼頭さんが私の事をどう思っているのか分からないから、いつまでたっても「鬼頭さん」って呼ぶしか出来ない。さすがに卒業したから「先生」とは呼ばなくなったけど、「静さん」と呼ぶ勇気がないのだ。

「はあ……お前はいい加減成長しないな」

 面倒臭そうにそう言うと、鬼頭さんは私から視線を逸らしてちょうどホームに入ってきた電車に乗った。

「待って下さい! 言わなくても分かるとかいう言うつもりじゃないですよね? 心の中で何を考えているのかなんて、他人同士で分かるはずないじゃないですか! ちゃんと教えて下さい!」
「うるさい、静かにしろ」

 それを追いかけながら声を荒げる私を叱る鬼頭さん。
 周りに迷惑なのは分かってるけど、今日は引かないんだから。

「嫌です!」

 そこで私ははたと気付いた。

「あ……もしかして、言うのが恥ずかしいんですか?」

 怒られるのを覚悟で言ったその言葉に、鬼頭さんは座席に座って立ったままでいる私を睨んだ。

「いいだろう」

 そう言って急に私の腕を掴んで引っ張っると、自分の隣りに強制的に座らせた。