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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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 水原さんの真摯な声とそれを制した鬼頭先生の声。その両方に何故か息が詰まりそうになる。

「待ちません! 好きなんです。本気で……」

 ――あれ、苦しいや……なんか、胸の辺りがすごく苦しい。

「……お前が本気で俺を好きだとして、俺に恋人がいるかもしれないとか、好きな女がいるかもしれないとは考えなかったのか?」

 うわ、鬼頭先生なんて酷い事言うんだろ。
 立ち聞きをしているという罪悪感が湧いて来た私が階段を昇ろうとした所でそんな台詞が聞こえて来て、思わずまた動きを止める。

「か、考えました……でも、それでも自分の気持ちをどうしても知って欲しかったんです」
「なるほど、知って欲しかった。か―――」
「自分勝手だという事は分かっています。だけどこのまま気持ちを伝えずに卒業してしまいたくなかったんです」

 卒業までまだ時間はあるのに、それでも今伝えなければいけなかったのは彼女なりの何か理由があるのだろう。

 私はそこでやっと張り付いていた足を動かし、その場を離れる事が出来た。
 階段を昇り切った廊下を進んだ所に自動販売機が設置されていて、ソファーとテーブルが並べてある。そこに座って膝を抱えた。

 水原さんの言葉は真剣だった。本当に鬼頭先生の事が好きなんだ……
 チクリと痛む胸に、私は自分も知らないうちに鬼頭先生の事を好きになっていた事に気付かされた。
 偶然とはいえ鬼頭先生が告白されているのを聞いて、自分の想いを知るなんて情けない。