私のやんごとなき王子様 鬼頭編
7日目
今日も朝からどういう訳か、医務室の手伝いをさせられている。知らない間に医務室担当になっていたらしい。真壁先生め!
だけど昨日海を眺めに出たのがいい気分転換になったらしく、何となく仕事もはかどっている。
日を追うごとに体調不良を訴える生徒の数も増えてて、またふらりといなくなった鬼頭先生を除く私と水原さんの二人で朝からずっと仕事をしているんだけど……。
私はちらりと水原さんの様子を伺う。
美人だな。
すっごいチープな感想で申し訳ないけど、水原さんは大人っぽい美人さんだ。こう出る所はちゃんと出てて、引っ込む所は引っ込んでて、私とは大違い。
怪我の手当をされてる男の子も水原さんだと自然と顔がにやけてるもんね。
どーせ私はまな板ですよーだ。
卑屈になりかけていた私の耳に、バタバタと廊下を走る足音が飛び込んで来た。
勢い良く開いたドアから飛び込んで来たのは鬼頭先生と真壁先生。真壁先生の腕には女子生徒が青ざめた表情で抱かれている。確か演劇に出演する子だ。
「どうしたんですかっ?」
水原さんが真壁先生に駆け寄る。
私はというと、直ぐさま近くのベッドの布団をめくって桶に水を入れ、タオルを濡らしてベッドの横に置いた。
「小日向、あれ持って来い」
「はい!」
鬼頭先生の鋭い一言で、私はくるりと体を反転させて机の脇に置かれていた鬼頭先生のバッグを取り上げた。
『あれ』で分かる私ってばすごいかも……。
シャッとベッド周りのカーテンが閉められ、中には具合の悪そうだった子と鬼頭先生、そして水原さんが残り、私と真壁先生はカーテンの外で並んでたっていた。
「貧血ですか?」
「多分な。ダイエットのし過ぎだろう。後は任せたぞ」
「あ、はい」
そう言ってポンと私の肩を叩くと、先生は忙しそうに医務室を出て行った。
作品名:私のやんごとなき王子様 鬼頭編 作家名:有馬音文