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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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「なるほど、俺の言う事をちゃんと聞いて、俺のおもちゃになるのを選んだって訳か」
「せっ、先生のおもちゃになるために生徒指導の手伝いを選んだんじゃありません!」

 不適な顔で言われて私は慌てて食い下がる。

「まあお前がどう思おうとも結局はおもちゃになるんだし、諦めろ。それに現時点ですでにお前は俺に遊ばれてるしな」
「っ!?」

 悔しいけど言い返せない。だって口から生まれた鬼頭先生に口で勝てる訳ないんだもん。
 ぐうう、と変な声を出していると、先生が一瞬いつもと違う雰囲気になった……ような気がした。
 そして、

「真壁に頼まれていた買い物があるんだ。放課後付き合わせてやるから、HRが終わったら職員駐車場に来い。いいな?」

 どうしてこう、偉そうに言わないと気が済まないんだろう、この人は。
 でもなんだかちょっとだけ、この人は素直じゃない可哀想な人なんだと考えれば、人を見下したような物言いも可愛く思えないこともない。
 私は急に可笑しくなって、ちょっとだけ破顔した。

「……いいですよ。お付き合いします。それじゃあ、失礼します」

 どうあっても私をおもちゃにしたいらしい鬼頭先生に、少しだけ付き合ってあげようかな。


*****


「ほわあ……」

 妙な感嘆の声を上げる私は今、鬼頭先生の車の助手席に座っている。
 何故感嘆したかというと、先生の車がとてもカッコいいからだ。
 私は車には詳しくないけど、ハンドルが左にあるし、どうみても高級外車っていうのくらいは分かる。
 メタリックシルバーのボディは冷ややかで、鬼頭先生っぽいなあ、なんて思ってしまった。
 車も持ち主も冷血なんて、冗談でも笑えないな。

「高そうな車ですね」

 つい思っていたことをそのまま口にしてしまい、一瞬バカにされるんじゃないかと、じとりと先生の言葉を待つ。
 だけど返って来た返事は意外なものだった。

「だろうな」
「……だろうなって、自分で買ったんじゃないんですか?」

 驚く私を一瞬横目で見て、先生はふんと厭味に口元を綻ばせる。