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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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6日目


 外は快晴、気分も上々。そんな今日も皆忙しく仕事をしているんだろう……いや、別に私が暇なのかというと全然違って、忙しい。

 何故なら昨日に引き続き今日も医務室で仕事をしているからなのだ。
 だけど、
 ―――どうして今日も鬼頭先生いないのよっ!?

 朝食後にミーティングをして、その後医務室の手伝いをするように真壁先生から仰せつかったまでは良かった。問題はその後。鬼頭先生ったら昼前に

「ちょっとトイレに行って来る」

 と言い残したきり帰って来ない!
 私は午後から交代でやって来る生徒を心待ちにしながら、医務室から見える海に向かって愚痴をこぼした。

「どうして鬼頭先生に関わるとろくな事がないんだろ。いっつも私の事馬鹿にして遊んで、仕事まで押し付けて一人でどっか行くなんてちょっと酷いと思う!」

 残念ながら探しに行く暇がないので一人でやるしかない。
 文句を言った所で鬼頭先生の性格が劇的に良くなるとは思えないし、生徒指導を選んだのだからどんな仕事でもしっかりやらなきゃとは思ってるーー思ってるけど、やっぱり何だかすごく損してる気がする。
 真壁先生も真壁先生だわ。どうして他にも生徒がいるのに鬼頭先生の手伝いに私を指名するかなあ。

「先輩荒れてますね」
「わっ、ごめん!」

 完全に現実逃避していた私は、指を切った後輩の傷の手当をしていたことをすっかり忘れていた。
 苦笑する後輩の指に絆創膏を貼り、申し訳ないと頭を下げる。

「今の愚痴は聞かなかった事にして?」
「別に言いませんけど、鬼頭先生って先輩の事からかったりするんですか?」

 質問されて私は顔を上げ、つかみかかる勢いでその男の子に答えた。

「そうなの。んもう顔見る度に憎まれ口なんだよ!」
「ははっ、それって先輩の事が好きだからですよ」

 後輩の言葉に私は自分を見失いそうになった。
「――はい? え? なんですって?」

 思わず聞き返す。

「男って生き物は不器用ですからね。特に鬼頭先生みたいなスマートでクールな感じの男って、素直に思ってる事を口にしたりするのが苦手だと思いますよ」

 俺も小学生の頃は好きな子にちょっかいだしてましたし。と言って後輩は笑った。