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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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 私達の目の前には大きなフェリーが青空をバックに悠然と佇んでいた。
 毎年理事長がチャーターしてくれるこの大型フェリーに乗って、理事長所有の島へ向かうのだ。
 港に勢揃いした我が星越学園の全校生徒。とは言っても生徒数が少ないうちの学校だから整列した様子に圧倒されるってことはないんだけど。
 駅の改札口を抜けた所に何故か立っていた鬼頭先生に私とさなぎは挨拶をして集合場所へと向かったんだけど、ここからは各担当部署毎に行動することになるから当然さなぎとは一旦お別れ。

 私は自分の荷物プラス、鬼頭先生に何故か持たされた荷物を抱えて列の一番端に並んだ。
 そして荷物をなんとか下し、スケジュールのメモを開いた。
 生徒指導のお手伝いだからやることがたくさんある。

「えっと、次は点呼確認。校長先生のお話。フェリー乗船……」
「おい」
「ああ〜。フェリーに乗ってからも仕事が待ってるよ〜。休む暇あるのかなあ?」
「おい!」

 確認をしながらぶつぶつ呟いていると、隣りから声を掛けられた。

「あ、はい。何でしょう?」

 顔を上げると、不機嫌そうな鬼頭先生の顔。
 低血圧なのかな?
 そう言えばさっき駅の改札口の所で先生が立っていたのを見つけた時は正直驚いたけど、だって私を迎えに来てくれたんじゃ。なんて思ったんだもん。でも結局荷物を持たされるはめになって、さなぎと分担してここまで運んだだけなんだよね。
 期待した私がバカだった。

「……お前、人の話聞いてるのか?」
「へっ?」

 一人回想に浸っていた私は、鬼頭先生から睨まれて現実に戻った。

「あっ、すみません。で、何でしたっけ?」
「真壁が呼んでる。早く行け」
「わ! す、すみませんっ!」

 恥ずかしい! スケジュール確認するのに必死で、全然周りが見えてなかった。こんなことでこの先一週間やっていけるのかしら?
 そして私は走り出そうとして足を止めた。気になることがあったのよね。
 振り返ると、鬼頭先生が少し眉をしかめる。

「なんだ?」
「いえ、荷物……」

 全部の荷物を置いて行こうとしているから荷物を見てて下さい。ってお願いしようと思ったけど、何だか怒られそうでそれ以上言えなかった。

「やっぱりなんでもありません」