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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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 まったくもう、ゲンキンなんだから! なんて思いつつも、さなぎの気持ちも十分すぎる程に分かる。
 とんでもないお金持ちで、物腰が柔らかで、おまけに美形。理事長とは言ってもまだ若く、確か36歳だったかな? 十分すぎるほどの魅力を兼ね添えた大人の男性に憧れを抱かない女子の方が少ないだろう。
 さなぎと一緒になって理事長の噂話なんかを、あれやこれやと話している内にあっという間に目的の駅に着いた。

 電車を降りると、すぐに潮の匂いが鼻腔をくすぐった。なんだかいよいよ始まるぞー! っていう感じでワクワクしてしまう。

「さ、それじゃあ重い荷物と共に、我ら庶民団参りますか〜!」

 さなぎが元気よく改札口へと向かい、私もそれを追う。

 駅を出ると港は目の前で、ここからでも私達の乗る大型客船が目に留まる。
 そしてその前にはメルセデスやフェラーリ、ジャガーといった高級車がズラズラと並び、見送りの挨拶を受ける生徒達でごった返していた。

 やっぱりこの学園において、私達みたいな庶民は本当に少数派なんだな――なんて少しだけ後ろめたさを感じる。なんだかこんな所にいるのが場違いにすら思えて来るのだ。

「行こっ、美羽」

 そんな私の心を察したかのように、さなぎが私の手を引いた。
 うん、そうだよね。私にはさなぎがいるし、それに――

 私を待っててくれる人もいる。

 改札を抜けた先に見つけたその姿に、私の心は一気に軽やか弾みはじめた。