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ネガティブガール、川

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 彼はまだ、私を落とさない気のようだった。
 告白には「少し考えさせて下さい」と答えた。もし「はい」という返事をすれば、私なんかに好かれていることで彼は不快になるだろう。「ごめんなさい」と返事をすれば、「こんな奴にフラられるなんて」と落ち込むだろうし、仲間からもそうからかわれるだろう。考えさせて、と答えれば、私が考えている間に「種明かし」してくれるかもしれない、と思ったのだ。

 通学路を少し歩くと、川沿いに差し掛かった。もうすぐ家に着くよ、という目印だ。この川に差し掛かってから二本目の分かれ道を右に曲がると、私の家がある。
 私は悶々と彼のことを考えながら、ふと川に目を落とした。澄んだ水に、自分の姿が写った。

 なんて醜い顔。
 こんな奴に好きと言って、私が信じるとでも思っているのだろうか?

 そう思った時、何故か私の目に涙が溢れた。それはまるで濁流のように激しく、留まることを知らない。止まれ! といくら言い聞かせても、だらだらと流れるばかりだ。私はしゃくり上げた。こんなに泣いたのは、生まれて初めてかもしれない。そう思うほどに、とにかく泣いた。



 どれくらい経っただろうか。ひとしきり泣いた後、私は川の方に降りて、川の水をばしゃばしゃと顔にかけた。
 やはり私はまだ、自分勝手な感情を捨てきれていないようだ。好きと言われたのだから、本当は迷いもなく彼の言葉を受け入れて、彼と付き合いたかった。彼の言葉を本気で信じたかった。例えそれが私を絶望に落とすための策略だったとしても、本気で彼の言葉を受け取ってみたかった!
 上空では、赤々としていた夕日は既に消え、星が瞬いている。泣き疲れた私は暫くそこに留まってぼんやりと星を見つめていたが、ふと我に返り、家までの道のりを早足で歩いた。
 家に帰ると案の定、遅い、何をしていたのと母親に怒られた。時計を見ると、いつもよりも二時間ほど遅い時刻を指している。「友達と遊んでいた」とか適当なことを言って誤魔化し、二階にある自分の部屋に向かった。
 この自分勝手な感情をちゃんと捨てなくちゃ、と私は思った。自分勝手な感情を持ってはいけないんだ! 私は自分に向かって、何度も何度も言い聞かせた。