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私のやんごとなき王子様 真壁編

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「よし、取りあえず休憩するか」

 フェリーに乗ってからも仕事は山積みだった。
 乗り遅れた人がいないか再び点呼確認をし、各担当が乗船中に何をするのかその内容についての確認。それが終わると島についてから生徒達の宿泊する部屋と避難経路の確認や緊急時の連絡の仕方などを生徒指導のメンバーでしっかりと話し合いをした所で、やっと休憩となった。

「はあ……」

 私は船室を出てデッキから流れる波しぶきを見つめて一息吐いた。
 先生達って学校行事がある度にこんなに大変な仕事をやってたんだなあ。感謝しなきゃ。
 そんな事を考えていると、

「ひゃっ!?」

 突然ほっぺたに冷たい何かが当たって驚いた。
 慌てて振り向くと、真壁先生がいたずらっ子の様ににかっと笑ってジュースを手に持っている。

「あ……もうっ、びっくりするじゃないですかっ!」
「ははは! 悪ぃ悪ぃ、ほれ、お疲れさん」

 そう言ってそのジュースを私に渡すと、先生はもう一つ持っていたコーヒーを飲んだ。

「ありがとうございます」

 受け取ったジュースを口に入れると、何だか疲れが少し取れるような気がした。

「なんかお前にばっかり仕事押しつけてるみたいで、すまないな」
「え? そんなことないです。皆同じように忙しいですし、それに私達よりやっぱり先生達のほうが全然忙しいじゃないですか」
「それが教師の仕事だからなあ。でも、本当に助かってるよ。なーんかお前を無理にこの仕事に引っ張ってきたみたいで、気が引けてたんだよな」
「私は自分で生徒指導の仕事を選んだんですよ。先生が気にする事じゃありません」
「そうかあ?」

 真壁先生が困ったような嬉しいような複雑な顔をすると、遠くの方から先生を呼ぶ声が聞こえて来た。

「あれ? 先生、誰か呼んでるみたいです」
「ん? あ、あれは確か一年の―――波江?」