私のやんごとなき王子様 真壁編
「真壁先生!」
「おう、小日向、佐和山! しっかり寝て来たか?」
元気よく挨拶を交わし、私達は並んで歩き出した。
「はい!」
「もうばっちりです!」
「そうか、小日向にはこれからすぐに仕事が待ってるからな、頑張ってくれよ」
「はい、頑張ります。ところで先生?」
「なんだ?」
「どうして駅に? 車で来なかったんですか?」
当たり前のように挨拶をしたから忘れてたけど、集合場所までは大概の生徒や先生方は車で行くはずだ。だから真壁先生がここにいるのがちょっと不思議だった。
先生は笑うと、
「電車で来る生徒もいるから、先生方何人かで駅まで見に来てたんだよ。丁度お前達が出て来るのが見えたから、小日向とはこれからのスケジュールの話しとこうと思って、他の先生に後は任せて来た」
「あ、なるほど」
「という訳で、集合場所に荷物置いたらすぐ仕事な」
「はい!」
微妙に緊張した面持ちで頷く私に、さなぎが笑った。
「ふふっ。美羽、頑張ってね。それじゃあ私、あっちだからまた後で!」
「うん、後でね」
駅の目の前が港になっていて、集合場所はすぐそこだ。そしてさなぎとはここから別行動。
さなぎに別れを告げ、私は先生と一緒に他の先生達のいる所へと急いだ。
*****
私達の目の前には大きなフェリーが青空をバックに悠然と佇んでいた。
毎年理事長がチャーターしてくれるこの大型フェリーに乗って、理事長所有の島へ向かうのだ。
港に勢揃いした我が星越学園の全校生徒。とは言っても生徒数が少ないうちの学校だから整列した様子に圧倒されるってことはないんだけど。
「よし、じゃあ点呼確認するぞ。お前はこれを頼む、終わったらフェリーに行って各担当ごとに決められた部屋のチェックを手分けしてやってくれ。済み次第ここへ戻って、生徒が全員乗船したのを確認してから最後に俺達生徒指導担当が乗船する。いいな?」
真壁先生の素早い指示を受け、私は手渡された担当部署と人数が書き込まれた紙を手に急いだ。
やることが本当にいっぱいだけど、ミスは出来ない。素早く、正確に仕事をこなさなきゃ。
作品名:私のやんごとなき王子様 真壁編 作家名:有馬音文