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私のやんごとなき王子様 真壁編

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後日談


「忘れ物はないか?」
「はい、大丈夫です!」
「……本当に大丈夫か?」
「大丈夫ですよ」
「……あーもう! 何で自分の事じゃないのにこんなに緊張するんだ!?」
「ふふっ、本当に大丈夫ですから、心配しないでください」

 隣りで頭を乱暴に掻きながらハンドルを回す真壁先生の様子に、私は思わず笑ってしまった。


 演劇祭の後、私は真壁先生から思いも寄らなかった告白を受け、その後我慢に我慢を続けて無事卒業し、やっと堂々と付き合える事となった。

 私は大学に進学し、先生は相変わらず学園で先生を続けている。
 私がちゃんと我慢したから職員免許剥奪なんて事にもならなかったしね。

 高校卒業から2年。今日から私は教育実習生として一か月星越学園に通う事になった。
 朝から家まで迎えに来てくれた真壁先生と一緒に、久しぶりの学園に向かいながらそんな会話をさっきから何度も繰り返している。

「なあ、美羽……」

 急に真面目な顔になった先生に目をやる。

「先生、学校では美羽って呼ばないように気を付けて下さいよ」
「おっと、悪い。小日向」
「なんですか?」

 先生ったらこういう所が可愛いんだよな。
 申し訳なさそうに私の名前を呼び直す先生を見て、笑みをこぼす。

「本当に教師になるつもりなのか?」

 その口調はいつもの明るいものではなく、真剣だった。
 私は自分の好きな人と同じ教師の道を歩く事を選んだ。それは、少しでも先生が見ている目線の高さに近づきたいから。