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私のやんごとなき王子様 真壁編

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「当たり前じゃないですか。そのために大学も教育学部を選んだんですから」
「でもなあ、お前は頭もいいし、他にも選択肢はたくさんあるんだぞ?」
「健亮さん」
「なっ、なんだよ」

 私が大学進学を決定した時、どこの学部を受験するかを知った先生は反対した。きっと私が自分のために無理をしていると思ったんだろうけど、それは違う。私は自分で決めたのだ。
 だから真剣に教師になりたいんだと言った時先生は渋々承知したけれど、やっぱりまだ自分の所為だと気にしているんだ。

 じっと隣りから見つめている私の視線と合わせないよう前を睨んだままの先生に、私は続けた。

「私は教師になりたいんです。健亮さんみたいに、皆から頼ってもらえるような……一緒に笑って悩んで、成長出来る素敵な教師に――これは私の望みなんです。健亮さんと同じ仕事に就く事しか、私には考えられません」
「美羽……」
「あの日、健亮さんが私を好きだと言ってくれた時、私決めたんです。少しでも健亮さんに近づくんだって……確かに私は健亮さんから見たら子どもだし頼りないかもしれませんけど、ちょっとでもいいから健亮さんと同じ感覚を持ちたいんです」

 思いの丈を静かにぶつけると、先生はやっと穏やかに笑ってこちらを向いてくれた。

「まったく……お前には敵わないな」

 そしていつものように大きな手で私の頭を撫でると、

「お前がそう思っててくれたなんて嬉しいよ。でもな、間違っても男子生徒と仲良くするんじゃねえぞ」

 ぼそりと言って頭から手を放した。
 今のはもしかして嫉妬してるのかな。本当に可愛い人なんだから!

「しませんよ! する訳ないじゃないですか! だって、私にはこ〜んなに素敵な彼氏がいるんですから!」

 目の前にある先生の腕に抱きつくと、焦って私を引き離そうとする。

「わっ! こら、馬鹿! 危ないだろうがっ!?」
「え〜? 少しくらいいいじゃないですか」

 照れる先生に笑いかけ、私は掴んだ腕に更に力を込めてしがみついた。

「……あーもう、仕方ねーな。次曲がるまでだからな」
「はあい!」

 後もう少し。次の曲がり角を曲がるまで、先生じゃなくて健亮さんって呼ばせて下さいね。
 私の大好きな先生!