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私のやんごとなき王子様 真壁編

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「卒業まで待とうとも思った。でも、今言わないと二度と言えない気がしてさ……」

 耳に当たっている先生の心臓は、弾けんばかりに鳴っていた。
 先生がこんなに緊張してる。
 そう思うと、何だか可笑しくなった。

「――ふふっ」
「あ、おい! お前笑ったな!?」
「すみません、違うんです。私も、先生の事が好きなんです―――」
「知ってるよ」
「えっ?」

 顔を上げようとしたけど、やっぱり先生の手が邪魔して出来なかった。
 相変わらず激しく鳴っている先生の心音を聞きながら、私は仕方なく横目に客席を見る。

「俺もそこまで鈍くないよ……じゃなかったらこんな状況で告白するか」

 やっぱり先生は大人だな。私が水原さんの事で嫉妬してたのも気付いてたんだ。だから船であんな事聞いたんだな。いや、もしかしたら自分で気付く前から先生の事を好きで、先生は私より先に私の気持ちに気付いてたのかも。

 敵わないな―――

 素直にそう思った。私はきっともっと前から真壁先生の事が好きだったんだ。

「あ! じゃあ、私達恋人同士ってことですか?」
「馬鹿、んなこと出来るか。卒業までは無理だな」
「ええっ!?」
「俺がクビになって教員免許も剥奪されてもいいなら別にいいぜ。お前とどっかの無人島にでも駆け落ちしてやるよ」

 やっと解放された頭を軽く振り、私は不適に笑う先生を睨んだ。

「もう! 先生ったら!」

 無人島で二人っきりでもいい。なんて思った事は、内緒にしておこう。だって先生は大人で、私より色んな経験をして来てて、頼りがいがあって優しくて……
 ずっと頼りっぱなしだった私だけど、少しでも先生に近づけるようにもっと頑張ろう。 
 こんなに素敵な思い出をくれたあなたを、もっと好きになりたいから。

 ありがとう、真壁先生。あなたと演劇祭が出来て良かった。

 あなたを好きになって、本当に良かった。