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私のやんごとなき王子様 真壁編

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「俺の家さ、父親は大学教授で母親は医者なんだ。二人兄貴がいるんだけど、医者と弁護士やってる」
「そうなんですか、皆さんすごいんですね」

 思ったまま素直な感想を述べると、真壁先生は苦笑した。もうすっかり落ち着いたみたい。

「周りの人達は皆そう言うよ。真壁さんの家はエリート家族ってな……それなのに俺一人が落ちこぼれなんだ」

 吐き捨てるように言った先生の言葉に、私は目を丸くした。
 落ちこぼれ? 先生が? どうして? 

「親戚には将来は医者か弁護士になるようにってガキの頃から言われ続けてた。別に親に直接言われた訳じゃないのに、そうなるのが当然の道だって思ってたんだな。兄貴も二人とも一流の大学に現役で合格して良い仕事に就いてさ……でも、俺は見事受験に失敗。浪人するような落ちこぼれは、受かる程度の大学に行って適当にやれって親戚に言われてさ。あーもう、俺は駄目なんだなってその時に思った」
「そんな……」
「選ばれた人間と選ばれなかった人間、そのどちらかしかこの世にはいないって思って、大学に入った頃は相当ヤサグレててさ。その頃に出会ったのが鬼頭と倉持さんだった」

 そう言えば前に理事長とは大学時代に知り合ったって言っていたっけ。辛い時期に支えてもらったんだな。

「あの二人は俺なんかよりよっぽど辛い思いをして来てるのに、すごく前向きだった。羨ましかったよ。俺には無いものを持ってるってな……そんな中、倉持さんの勧めでこの学園の教師になって、また別のヤツにも驚かされた」
「風名君と亜里沙様ですか?」

 私が尋ねると先生は笑った。

「いいや。お前だよ」
「へえ、私……って、ええっ!? どっ、どうしてですかっ!?」

 まさかの答えに思わずおろおろしてしまった。先生はそんな私を見てにっと笑う。

「お前、奨学金でこの学園に入っただろ?」
「あっ、はい……」
「そうまでしてこの金持ち学校に入りたいなんて、きっと芸能界とか玉の輿に憧れる嫌なガキなんだろうなって思ったんだが……」

 失礼な。違いますよ!
 と反論しようとしたけど先生はまだ話しを続けたそうだったからやめた。