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私のやんごとなき王子様 真壁編

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「全然違った―――お前は周りの連中に何を言われてもめげず、普通に友達も増やして行ったし、何より本当に努力してるって分かった。俺みたいに自分を卑下したりしないで前向きに頑張る姿を見て、ああこいつすげーなって素直に驚かされたんだ」
「そんな事無いです……とにかく必死で」

 星越学園に入学したかったのは、お金持ち学校だからじゃない。この学園の校風や教育理念に心を打たれたからだ。それに、私以外にも奨学金を受けて通っている子は何人かいるし、先生に褒めてもらえる程の何かを持ってるなんてことはない。

「いいや、お前は凄いよ。なんでだろうな、お前見てたら俺にもまだ出来る事があったんじゃないかって、ガキの頃の事を思い出すんだ……こんな駄目な俺でも―――」
「先生は駄目なんかじゃありません! 少なくとも、私やさなぎは先生の事大好きです!」
「――小日向……」

 ……あれ? 私今、ものすごく大変な事言ったんじゃ―――
 思いがけず告白してしまい、私は青ざめた。
 どうしようっ! 水原さんの時みたいに先生と生徒だからって言われちゃうっ!!

「ぷっ! ありがとな。こんな話しに付き合ってくれて……だけどやっぱり駄目だな。生徒に愚痴を聞いてもらう教師ってどうよ?」

 先生は私が言った好きを恋愛感情での好きだとは思わなかったらしい。ほっとした反面、ちょっぴり残念……かな?

「先生だって人間じゃないですか。愚痴を言いたい時だってありますよ。私でよければいつでも愚痴ってください。先生の愚痴なら大歓迎です!」

 気付かれなかったのをいい事に、私は調子に乗って反らした胸をドンと叩いた。
 それにまた先生はおかしそうに笑うと、私の頭を撫でた。

「まったく、お前は本当に変なヤツだな。よし、部屋に戻るか」
「はい!」

 立ち上がるとさり気なく先生は私の手を取って歩き出した。
 大きな手は温かくて、まだ砂が残っていてちょっとだけざらりとしていた。……ということは、もしかして砂がついた手で私の頭を撫でたって事?

「――先生、手の砂が落ちてないです」

 恨みがましく先生を睨むと、気にも止めない様子で

「風呂に入るからいいんだよ」

 と言った。

「私の頭にも砂が付いてるんですよっ」