私のやんごとなき王子様 真壁編
私は何とか先生を元気づけてあげたかった。好きだからっていうのはもちろんだけど、こんな風に辛そうな顔の先生は先生らしくないと思ったから。
だから、思い切って言ってみる事にした。
「――あの、夕食の後に海を見に行きませんか?」
「海?」
「はい。気分転換です!」
「気分転換って、お前。この間海に飛び込んでたじゃないか」
「この間はこの間、今日は今日です。可愛い生徒の気分転換に付き合ってくれてもいいじゃないですか」
何だか必死だな、私。ちょっと恥ずかしくなってきた……
説き伏せようと思ったけど良い言葉が思い浮かばず、私は断られるだろうと諦めた。しかし、先生はふっと笑って私の頭を大きな手でガシガシとかき回すと、
「ったく、仕方ねーな! んじゃあ、可愛い生徒のお願い、聞いてやるか」
そう言ってくれた。
「あ、やったぁ!」
びっくりした。まさか本当に行ってくれるなんて。
私は飛び上がりそうになるのを必死で堪え、残りの仕事を片付ける為に真壁先生に別れを告げて階段を駆け下りた。
水原さんみたいに告白する勇気はないけど、担任に甘えるくらいしたっていいよね?
作品名:私のやんごとなき王子様 真壁編 作家名:有馬音文