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私のやんごとなき王子様 真壁編

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9日目


 昨日、水原さんの告白を聞いてから、私は一日中その事が気になって仕事がおろそかになりがちだった。

 危うくミスをしそうになって慌てて頭を振る、という事を何度も繰り返した。
 今日は部屋での作業よりも他の担当部署での手伝いが多かったから、真壁先生と水原さんの姿を見かける事はほとんどなかったのだけど、二人が話している姿をチラリと見かけた時はちょっと胸が痛かった。

 真壁先生はやはりというか、先生なだけあっていつもと変わりない様子だったけど、水原さんの表情はどこかしら硬くて疲れているように見えた。
 そりゃそうよね。好きな人、しかも先生に告白したんだもん。きっと色々考えて眠れなかったに違いない。


 夕方になり実行委員本部に行って演劇祭当日に必要な物のリストを受け取ると、私は急いで生徒指導の部屋へと戻っていた。と、途中の廊下で偶然真壁先生の姿を見つけた。
 珍しくぼうっと窓から外を眺めていて、気になって思わず足を止めてしまった私の耳に飛び込んで来たのは微かなため息だった。

 先生がため息を吐くなんて……

「――真壁先生」
 
 思わず声を掛けていた。
 しまった! って思ったけど後の祭り。真壁先生はゆっくりとこちらを振り返って笑った。
 でもその笑顔には力が無い。

「おう、小日向。お疲れさん。どうした?」
「お疲れ様です……どうかしたのは先生の方ですよ。大丈夫、ですか?」

 先生の元気が無い理由なんて一つしかない。昨日水原さんに告白された事だ。
 真面目で優しい先生の事だから、彼女の事を真剣に考えているんだろう。私は偶然聞いてしまったから分かる。水原さんは真剣だった。単に先生と生徒だからという理由だけで断れる程、彼女の告白は軽いものじゃない。

「別に、ちょっと疲れただけだ。でもま、本番まで後4日だからな。あっという間だ」

 窓の向こうの海を見る先生の瞳に夕日が反射して、すごくキラキラとしていた。
 胸がざわめく。

「先生、今日の仕事は遅くまでかかるんですか?」
「あ? いや、今日は案外早く終わったからな、明日の準備くらいで済みそうだ。どうしてだ?」