私のやんごとなき王子様 真壁編
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甘かった。
メモを見る限りでは大した量じゃないと高をくくっていたのに、いざ買い始めると女の私一人ではとてもじゃないけど持って歩けないほどの荷物になってしまった。
商店街のアーケードを、女子高生が引きずるように荷物を抱えて歩く姿はさぞかし異様に映るだろう。
今日は終業式だったから同じ学校の生徒もちらほら見かけるんだけど、こんな時に限って誰も知った人に会わないってどういうこと!?
「うえ〜。誰か助けてくれ〜〜」
情けない声でその場にしゃがみ込み、音沙汰の無い携帯を開く。
残念ながら真壁先生からの着信もメールもなく、虚しい無機質な画面が見えるだけだった。
先生やっぱり仕事終わらなかったのかな。こんな大荷物、どうやって家まで持って返ろう。
そんな事をぼんやり考えているまさに最中、私は今まで経験したことのない浮遊感を感じた。
「うわあっ!?」
そう、あろうことか私の体が突然宙に浮いたのだ。
驚いて両手足をばたつかせる。
「何っ! 何っ!?」
「おいこら、暴れるなっ!」
「へっ?」
地面に足が着いて少しだけ落ち着くと、頭の上から声が降って来て私は見上げる。
「真壁先生っ!」
なんと私の顔を覗きこんで笑っているのは、真壁先生だった。
しばらくじっと私の顔を見ると、先生はほうと息を吐く。
「はあ、良かった……お前が急にしゃがみ込むから、どこか具合でも悪くなったのかと思ったぞ」
「え?」
そこで先生は私の両脇に差し込んでいた自分の手を引いた。
うわっ、私ってば先生に持ち上げられてたんだ……私、手荷物みたい。
「仕事が思ったより早く終わったから商店街まで来たんだが、お前に連絡取ろうとしたら丁度荷物引きずって歩いてるのを見つけてな……そしたら急にしゃがみこんだからびっくりして」
「そうだったんですか。ご心配おかけしました」
私が頭を下げると先生は私の頭を優しく二度叩いて、地面に転がる今度は私でなく本当の荷物を軽々と担いだ。
やっぱり真壁先生は力持ちだなあ。
作品名:私のやんごとなき王子様 真壁編 作家名:有馬音文