私のやんごとなき王子様 真壁編
「しかし悪かったな、こんな大荷物になるなんて思ってなかった。仕事が早く終わって良かった。小日向一人じゃ無理だわ、こりゃ」
「本当に先生が来てくれて良かったです」
「おう、力仕事なら任せろ。あと買う物は何かあるのか?」
「いいえ、それで全部です」
「そうか、ご苦労だったなあ。ここでご褒美に美味いもんでも奢ってやりたいんだが、さすがに教師が放課後生徒連れてデートしてたらマズいもんな」
そう言って笑う先生に、私もつられて笑う。
「大丈夫ですよ。私が先生のお手伝いをするって決めたんですから、気にしないでください」
先生の奢りっていうのは魅力的なんだけど、教師と生徒だもんね。買い物は演劇祭の準備って言えるけど、さすがにカフェでお茶はねえ。
「俺と小日向じゃあ親子は無理があるしな」
「……先生、設定作ってまで本当は自分がお腹空いてるから何か食べたいだけでしょう?」
「おっと、バレたか。ははははっ! まあここは我慢するかあ。よし、帰るぞ。車で送ってやるから着いて来い」
元気に笑うと、先生は一度荷物を持ち直して歩き出した。
さすがの先生も一人で全部の荷物は多いよね。
「はい。あ、先生荷物少し持ちます」
「お、悪いな」
先生が私にくれたのは小さな軽い袋一つだった。
優しい先生だな。いつも熱心だし、親身になって話しを聞いてくれるし、力持ちだし、大きいし。一緒にいると、なんだかすごく安心感を得られる。
真壁先生のクラスになれて、本当によかった。
作品名:私のやんごとなき王子様 真壁編 作家名:有馬音文