私のやんごとなき王子様 真壁編
私の目の前には青い海! 朝部屋の窓から見てた景色が手の届く所にある。なんて気持ちがいいんだろう!
「う〜〜〜〜ん、気持ちいい!」
太陽の光を全身に浴びながら、私は大きく伸びをした。
水着は新調出来なかったから去年と同じものだけど、気に入ってるから良しとしよう。
実は昼食後に演劇担当の人達が海で遊んでいるのを見て、羨ましいと思ってたのよね。真壁先生に感謝しなきゃ。
私は一人軽い準備体操をすると、海に向かって走った。
バシャバシャと鈍い音としぶきを立てて海に飛び込むと、その冷たさが一気に全身を駆け巡る。
「ぷはあっ!!」
「おう、小日向!」
海から顔を上げた所で名前を呼ばれて見ると、真壁先生が手を挙げながらこちらへやって来た。
あっ、真壁先生も水着だ……
いつもスーツかジャージでいる姿しか見ていないから、先生の水着姿がすごく新鮮だった。
力持ちな先生の体は筋肉質で、男の人! って感じがする。
――やだ、何でだろう。ドキドキしてきた……。
私は海から上がり、先生の前までゆっくりと歩いた。だけど真っ直ぐに真壁先生の目を見られなくて、ちょっと横へ視線をずらす。
「お前豪快に海に飛び込んだな! 気持ち良さそうだ。俺もやろうかな」
もしかして走って海に飛び込んでたの見られたのかな? ちょっと恥ずかしい。
「あはは。せっかくの海ですから、思い切り良く行こうかと思いまして」
「ははっ! だよな。やっぱりずっと仕事ばっかりじゃ身が持たないしなぁ」
「そうですね」
「今日は朝から忙しかったが、体調はどうだ?」
昨日もちょっと疲れた顔をしていたからか、先生が心配してくれてる。
「全然大丈夫です。忙しくてそんな事考えてる暇なんてないですよ。それに今は楽しくて仕方ありません!」
「ははっ、全くだ」
「真壁先生!」
二人で笑っていると、一人の女子がこちらへやって来た。同じ3年生で生徒指導担当の水原さんだ。
作品名:私のやんごとなき王子様 真壁編 作家名:有馬音文