私のやんごとなき王子様 真壁編
6日目
快晴快晴!
今日も朝から真っ青な空と海をどこまでも広げる景色を見つけて、大きく息を吸い込んだ。
昨日はまた落ち込んじゃったけどさなぎのおかげで元気が出たし、元気一杯今日も頑張らなきゃ!
なーんて余裕だったのは朝食まで。仕事が始まってからの私は息を大きく吸い込む余裕もなくなっていた。
「おい、これの確認は出来てるのか? 今すぐ実行委員に確認取って来い!」
「衣装用の生地がもうすぐこっちに届くらしいから、小道具担当者に連絡して!」
「はい!」
一度に色んな事を先生達に言われ、私の頭は朝からフル回転。書類を手に実行委員本部へと走りながら、口の中で小道具の人に生地が到着する旨を伝える。という言葉を繰り返す。
覗いた実行委員本部も慌ただしくて、なんとか近くにいた男の子を捕まえて書類の不備を確認してまた廊下を走る。
も〜う! これじゃあ体がいくつあっても足りないよお!
そして小道具担当の部屋へ行くとこちらも負けず劣らずの混雑っぷりで、演劇出演者で手が空いている人も入り乱れての衣装作りとなっていた。ここでは丁度担当の先生がいたから生地の事を伝えて漸くほっとする。
だけどゆっくり戻っている暇もなくて、窓から見える海を恨めしそうに睨みながら走った。
*****
「え? いいんですか?」
忙しさで目が回りそうだった午前中とは打って変わって、夕方近くになると仕事が急に減った。
そんな折、真壁先生から伝えられたのは海にでも行ってちょっと気分転換するか。という嬉しいお言葉!
生徒指導の手伝いをしている生徒は私を含めても6名と少なくて、他の仕事は先生方で十分回せるから行って来いと言うのだ。
「まあ、何かあったらいけないから一人先生も付き添うが……」
海に入れると知って喜ぶ私達を前に、真壁先生がぐるりと室内を見回す。
「――手が空いてそうな先生は……うん、俺でいいか」
そして視線をこちらに戻すと、白い歯を見せて笑った。
ふふっ、先生ってば本当は自分が一番海に行きたかったんじゃないかな。
嬉しそうな生徒6名プラス先生1名で、海へと繰り出した。
作品名:私のやんごとなき王子様 真壁編 作家名:有馬音文