彼女のトモダチ
美波は意識を失うように、競技中に崩れて転んでしまった。もう、走れなかった。
「鈴木!」
遠くで先輩の声が聞こえたが、美波はもう立ち上がる気力もないかのように、その場で泣き崩れた。
(もうイヤ……どうして私、こんなに馬鹿なんだろう……割り切れない。無理なものは、無理だ……!)
救護テントの仮設ベッドで、美波は横になっていた。先輩や先生が付き添ってくれているものの、その声は美波には届かない。
(私は、千笑が大事。千笑のことも信じてる……そう、だから……何があっても、田村のことを好きになっちゃいけないんだ。一人で辛くなるのも駄目。誰にも心配かけちゃ駄目。こんな駄目な私なんか、死んじゃえばいいんだ……!)
止まることを知らない美波の涙を見て、先生も先輩も、それ以上、美波に何も言おうとはしなかった。
しばらくして、外は雨がぱらつき始めた。すべての競技を終え、すでに競技場は片付けの準備に入っている。
美波もだいぶ落ち着いたようで、帰り支度を始める。付き添いの先生と先輩を残して、他の部員は帰っていったようだ。美波も支度を整えると、先生と先輩とともに、競技場を出ていった。
診察した医師からは、極度のストレスと疲労、そして寝不足だと診断された。ネガティブな自分と、大会で走りきれなかった自分に嫌気が差し、美波は深く落ち込んだ。