双子の王子
驚きを帯びたルギの声と、ルナの困惑の声が入り交じる。
ソルはどちらにも答えず、神殿の奥へ走った。
白い扉をくぐり、黒い扉をくぐり、奥へ、奥へと。、
「ここまで…来れば…大丈夫…です…から…」
ルナが言うので足を止めたソルは、息を切らしながら尋ねた。
「なんで…大丈夫…なんだ…?」
「さっき…通った…金色の…扉は……大人は…くぐれないの…です……」
「じゃあここには…子供しかいない…のか…?」
「いえ…その、」
とルナは顔を赤らめながら、しどろもどろに、
「……大人に…なるための…儀式を受けた者は…入れないそうです…。僧正様は…ここより更に奥に……」
「こっちか」
二人は手をつないだまま歩き、その大きな白い扉を開いた。
薄暗い室内を照らすのは、天窓から注ぐ僅かな光。
奥の方には祭壇があり、その手前も数段高くなっていた。
そこに小柄な老人が一人、扉に背を向けて座っていた。
「僧正様、お客様です」
「あぁ…ソル王子じゃな……」
老人は振り向きもせずに言った。
ソルは膝をつき、
「グランテ王国第一王子、ソル・スウォード・グランテです。貴方が…」
「この神殿の長で、サジャと申す者…。王子はルナのことで聞きたいことがあるのであろう」
「そうです」
と答えてからソルはルナへ、
「悪いが少し席を外してくれないか?」
「えっ……はい」
「すまない」
ソルはルナが出ていき、扉が完全に閉まってから、サジャに問いかけた。
「…ルナは、私の兄か弟なのでしょう?」
「そう。スウォード王が神殿の前に捨てさせた、お前の弟じゃ…」
「やっぱり…」
「どうやって気付いたのかな?」
「ルナの話を聞き、胸の火傷を見て、気付きました。胸を焼いた理由はこの国の王子特有の印を隠すためだと。ルナが拾われたのも、私の誕生日の翌日でしたから、きっと私の兄弟なのだと。そして何より…」
そう、ソルはうっとりと目を細めた。
「出会った時に感じた、あの懐かしさと愛しさが、教えてくれました」
サジャはほっほと笑い、
「双子とは不思議なものじゃて…。それで王子よ。どうしてルナが捨てられたか、分かるかの?」
「…双子は忌むべきものとされるから、ですか? もしかしたら、胸の印が悪とみなされるものだったからかもしれませんね」