双子の王子
絞った服を火にかざし、乾かしていると、ソルがルナに尋ねた。
「ルナはいくつだ?」
「は?」
「今、何歳だ?」
「拾われた日を誕生日とすると、十六です」
「…拾われたのは何日か、分かるか?」
「冬の月の九日です」
ソルは微かに息を呑んだ。
それはルナの拾われた日がソルの誕生日の翌日だったからだ。
ソルにとっては恐ろしい疑惑が胸の内に沸きあがりつつあった。
ルナは、こんな質問をし、そのたび顔色が悪くなるソルを、訝しげに見た。
ソルは自分の変化に気付いているのかいないのか、なおも質問した。
「…拾われた時のことは何か分かるか?」
「…いえ、私は何も。…ただ、私を拾ってくださった僧正様は千里眼で有名な方です。僧正様に聞けば分かるとは思いますが…」
「…そうか」
「……殿下、如何なさったのです?顔色が悪くなっていますよ。もしや、お風邪でも召されたのでは……」
「気にしないでくれ、ルナ。だが、もしかしたら俺たちは…」
言いかけて、ソルは口を閉じた。
『俺たちは兄弟なのかもしれない』
言いかけた言葉を口にすれば、自分が信じてきた様々なものが壊れてしまいそうだった。
「…あの…殿下……?」
「いや…なんでもない」
ルナは首を傾げながら外を見た。
雨足は弱まり、今にも止みそうだった。
光さえ、差し込んできているように見える。
「殿下、ひとまず神殿へ向かいましょう。お供の方もさっきの雨で雨宿りをされているかもしれませんし」
「そうだな…」
服装を整え、洞窟を出る頃には雨も上がり、空には鮮やかな虹さえかかっていた。
「殿下、馬にお乗りください」
「いや、いい。馬もあれだけ走った挙句、びしょ濡れになったんだ。疲れているだろう。俺はさっき休んだおかげで元気だし、歩くことにするよ」
「…殿下はお優しいのですね」
「そうでもない。当然のことだからな」
ルナは好もしげにソルを見た。
「この国の民は幸せですね」
二人並んで歩きながら、ルナが言った。
「こんなに頼もしく、立派な方が次の王だなんて」
「別に、俺が次の王だとは決まってない」
「え?」
「父上が他の者に王位を譲るかもしれないし、俺が王になる前に死ぬということも、ありえないわけではないだろう?」
「……ええ、そうですね。でも、きっと殿下はよい王になると思いますよ。私が保証します」