双子の王子
むにゅむにゅと桜色に染まったルナの頬を揉みながらレティアがそう言うと、ルナは少しばかり眉間に皺を寄せながら答えた。
「嬉しいですよ。父上からいただいたものがもう一つ増えましたから」
「…ああ、もう、この子ったら!」
そう叫んで、レティアはルナが苦しがるのもかまわずルナを抱きしめた。
「なんて可愛いのかしら! ねぇ、ソル! 逃げるのならひとりで逃げて、この子は置いてってちょうだいよ」
「そうは行きませんよ」
憮然としてソルは言った。
「あのくそ親父に見つけられたら、ルナがどんな目に遭わされるか!」
「スウォードより危ないのはルギだと思うけど?」
「う…っ……」
レティアは笑みを浮かべた。
ただし、にっこりという上品なものではなく、ニヤリと表現するのがしっくりくるような歪んだ笑みを。
「素敵な側近よねぇ?」
「…っ、俺がそうしたわけではありません!」
「まぁ、ルギがああなったのはルギの親とスウォードのせいだとは思うけど、いくらかは貴方のせいよ、ソル」
「……」
「貴方が、予想以上にいい出来だったから。もっともっとお馬鹿さんだったらあれもそんなに執着しなかったでしょうにね」
「ぐぅ…っ…」
ソルをやり込めて満足したのか、レティアはルナを開放して言った。
「さてと……あんまり引き止めるのも悪いわね。そろそろ逃げる?それとも、スウォードがここまでは探しに来ないと踏んで、朝までここで過ごす?」
「あ…えっと……」
ルナは助けを求めるようにソルを見た。
ソルは頷いただけだったが、ルナは答えた。
「もう、行きます。母上に会えて、本当に嬉しかったです」
「そう。……じゃあ、これを持っていきなさい」
と言ってレティアが化粧台の引き出しから引っ張り出したのはひとつの指輪と財布だった。
「これ、中身は少ないけれど、旅の支度を整えられるくらいはあると思うから、うまく使って。財布自体もそれなりの値がつくと思うわ。それからこっちの指輪なんだけど……これは、私の実家の物よ」
「母上の実家って……」